<社説>概算要求101兆円 財政再建へ本腰を入れよ


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 各省庁の2015年度一般会計予算の概算要求総額が101兆6千億円となった。初の100兆円突破で、14年度当初予算を5兆8千億円上回る。高齢化で年金や医療などの社会保障費が膨らんだ一方、来年春の全国統一地方選を意識して設けた4兆円の特別枠なども総額を押し上げた。全体として「水膨れ予算」の感が否めない。

 特別枠は「地方創生」を掲げる安倍政権が、育児支援などの人口減対策や地域活性化策の拡充を図る目的で創設した。各省庁からは予想通り、予算枠いっぱいの要求があったが、その内容は従来政策の焼き直しが目立ち、新味に乏しい。
 政府・与党内では景気対策など14年度補正予算の編成を求める声もある。各省庁の概算要求からは補正予算編成をにらみ、15年度予算は最大限要求しておこうという思惑もうかがえる。こうした財政規律の緩みは納税者の信頼を裏切るもので、断じて許されない。
 ことし6月末の国の借金は過去最大の1039兆円に達した。3月末時点から14兆円増えるなど借金の膨張に歯止めがかからない。
 政府は4月に消費税増税に踏み切った。国民に新たな負担を求めておきながら、予算を膨張させ続ける政治家や官僚の感覚は理解できない。財政健全化に取り組む気概が本当にあるのか。
 概算要求では国土交通省(14年度当初予算比16%増)や農林水産省(同14%増)などの大幅増が目立つ。災害に強い国づくりを目指す「国土強靱(きょうじん)化」の関連事業費は、国交省などを中心に26%増の4兆5千億円が計上された。防災対策は推進すべきだが、中身の徹底的な検証が必要だ。公共事業費も16%増えたが、建設業界の人手不足や資材高騰が深刻化する中、安易なバラマキでは経済効果も乏しい。
 安倍政権で膨張している防衛予算は5兆円を突破した。これも甚だ疑問だ。オスプレイ配備費を計上するなど装備増強を急ぎ、南西諸島防衛を強化するとしているが、米軍基地が集中する沖縄で自衛隊の新たな拠点化を進める狙いがある。中国を刺激しかねない危険な動きだ。
 財政再建に取り組む政府の姿勢が見えてこない。安倍晋三首相は来年10月に予定する消費税の再増税を今年末に判断する方針だが、予算の無駄を徹底的に省き、歳出抑制に本腰を入れない限り、再増税論議は言語道断だろう。