<社説>DVなど相談最多 社会全体で被害なくそう


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 県内のドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)とストーカーの相談件数が2014年上半期(暫定値)で前年同期比56件増の419件と過去10年間で最多になった。命を奪われる最悪の事態に発展させないためにも、相談を機に被害拡大防止につなげたい。

 県警は相談件数のうち73件を摘発した。さらに「本部長の援助」という対応も取っている。「援助」とは相談を受けて相談者の安全を確保するために警察施設で保護したり、加害者が居場所を突き止めないよう住民票の閲覧を制限したり、相談者の携帯電話などをシステム登録して110番通報時に即座に急行できるようにしたりすることだ。
 事件を未然に防止する「援助」は昨年1年間で57件だったが、今年は上半期だけで51件に上る。また文書の警告だけでなく、口頭警告、任意同行を求めるなどの対応もしている。県警が対策を強化していることの表れだ。評価したい。
 県警はDV・ストーカー対策を強化するため、ことし4月に職員13人体制の「子供・女性安全対策課」を新設し、県内14警察署には警察安全相談係も設置した。さらに機動捜査隊、刑事など県警各部に所属する55人からなる「DV・ストーカー事案等対処チーム」を結成し、24時間態勢で事件に対応している。
 こうした取り組みは警察庁が凶悪事件を防げなかった教訓を生かし、生活安全部門中心だったストーカー対策を見直し、殺人などを担当する刑事部門も投入する方針に沿ったものだ。しかし県警は06年に「配偶者からの暴力事案及びストーカー事案総合対策要綱」を全国に先駆けて制定し、各警察署に専門官を配置している。引き続き独自の対策を継続してほしい。
 警察庁の調査では全国のストーカー事案を担当する警察官の8割超が被害者から「被害届」などの対策を断られている。多くが「加害者の逆上の恐れ」を理由に挙げている。県内の相談件数増加の背後にはさらなる潜在的な多くの被害者が存在すると考えるべきだろう。周囲に被害につながるような異変を見つけたら、本人に代わって相談してほしい。
 対策は警察に集中しているが加害者の更生や治療、被害者の心のケアなど関係機関が連携を深める課題もある。今後は社会全体が関心をもって被害防止の仕組みづくりをさらに広げたい。