<社説>米軍夜間飛行激化 人権侵害を即刻中止せよ


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 地域住民の暮らしを破壊する異常事態であり、到底看過することはできない。米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイなどの軍用機が8月下旬以降、日米間で運用の制限を取り決めた午後10時以降の飛行を繰り返し、80デシベル以上の騒音をまき散らしている。

 8月25日から今月9日までの16日間で、夜間飛行は少なくとも9日間確認され、最大97・3デシベルの騒音を記録した。これは電車通過時のガード下の騒音に相当する100デシベルに迫る値だ。しかも今月3日夜からは3夜連続で午前零時を超える飛行も確認されている。
 相次ぐ夜間飛行に周辺住民からは安眠妨害を訴える声が相次いでいる。肉体的、精神的な苦痛を強いる重大な人権侵害であり、米軍は夜間飛行を即刻中止すべきだ。
 あらためて確認しておきたいが、日米両政府は1996年に騒音防止協定を締結し、普天間と嘉手納基地での夜間飛行を必要最小限に制限することで合意している。
 しかも日米は2012年9月、オスプレイの普天間配備に当たり、「午後10時から午前6時までの間、飛行および地上での活動は、運用上必要と考えられるものに制限される」と合意している。
 飛行制限は「必要最小限」「運用上必要」などを抜け道に有名無実化しているのが実態だ。米軍の自由裁量で運用される基地は、米軍占領時代以降、何ら変わっていない。換言すれば、日米両政府は甚だしい人権侵害を戦後70年近くも放置しているも同然だ。
 同様に米軍が駐留するイタリアやドイツと比べると、基地運用における沖縄の異様さが際立つ。イタリアでは、米軍が飛行訓練を実施する際には伊側への通告義務があるほか、昼寝をする習慣(リポーゾ)のため、夏場の午後1~4時は飛行できない。二重基準どころか、沖縄に対する人種差別的な対応ではないかとの疑念すら湧く。
 安倍政権は事あるごとに「沖縄の負担軽減」を強調するが、お題目と乖離(かいり)する飛行実態を直視すべきだ。ご丁寧にも第2次安倍改造内閣では、沖縄基地負担軽減相を創設し、菅義偉官房長官が兼務する。
 辺野古基地建設を県民に押し付けるための負担軽減相であれば、ブラックジョークでしかない。まず最低限になすべき任務は、形骸化した騒音防止協定を米軍に順守させることであると心得るべきだ。