<社説>県知事選 3候補の政策見比べよう


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 翁長雄志那覇市長が11月16日の県知事選への出馬を明言し、現職の仲井真弘多知事、下地幹郎元郵政民営化担当相と合わせて主要3候補の立候補表明が出そろった。投票まで2カ月余りだ。それぞれの主張にじっくり耳を傾けよう。

 日本復帰から42年、来年は沖縄戦から70年だ。今回の知事選は、米軍普天間飛行場の移設問題で日本政府が民意を無視して作業を強行し、来年早々にも埋め立て工事を始めようとする中で迎える。歴史の岐路に差し掛かっている中での投票となることをかみしめたい。
 新たな振興計画の下、沖縄経済は主要産業の観光を中心に発展を続けているが、県民所得は依然最下位であり、失業率は改善しつつもまだ全国最低水準だ。非正規労働者の割合は全国で最も高く、一方で人手不足は深刻化している。
 自立に向け、経済・雇用面の抜本的な構造改革が求められよう。医療・福祉、教育などその他にも課題は山積している。知事選に向け、3候補は具体的かつ分かりやすい政策を提示し、積極的に論戦を展開してもらいたい。
 知事選の最大の争点となる辺野古移設問題について、菅義偉官房長官は仲井真知事の埋め立て承認を根拠に「もう過去の問題だ。争点にはならない」と言い放った。
 菅氏はこれまでも県知事選に関する「口先介入」を繰り返している。百歩譲って政治家としての主張があったとして、民主主義の原点である選挙の実施を前に、その結果は考慮しないと大臣の立場で公言するその見識を疑う。これがまともな民主主義国家のリーダーの発言と言えるのか。
 普天間問題でもう一つ、看過できない発言があった。3日に就任した江渡聡徳防衛相が、仲井真知事が求める普天間の5年以内の運用停止に対し、「5年」の起点は「決まっていない」と述べた。
 起点について県は、政府との会議が発足したことし2月だと説明しているが、これを否定する発言だ。要は5年内停止を約束できないのだろう。そう堂々と説明すべきだ。
 今知事選は基地問題を軸とした従来の保守と革新の対決構図が崩れ、保守勢力が分裂した中での争いとなる点でも、歴史的な意味を帯びている。今後の沖縄の行方を左右する重大な選択になることを有権者一人一人が再確認し、候補者の政策を見比べよう。