<社説>人口急減社会 実効性に焦点当てた施策を


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 人口減少は経済面だけでなく社会全体の活力を奪いかねない。人口減、中でも過疎地の人口急減に警鐘が鳴らされるのは今に始まった話ではないが、取り組みの遅さを嘆いている暇はない。知恵を絞り、あらゆる手だてを講じたい。

 人口減少や地域活性化に関し政府の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」(創生本部)が発足した。この種の機関は効果に乏しい施策を羅列しがちだ。実効性に焦点を当て、具体的な政策目標を立てて施策を推進してもらいたい。
 5月に民間団体「日本創成会議」は報告書を発表した。子どもを産む中心の世代である20~39歳の女性が2010年に比べ40年に半分以下となる自治体は896の市区町村に上ると試算。「将来消滅する可能性がある」と指摘した。全自治体の49・8%が消滅の危機にあるという衝撃的な結果である。
 日本人の人口は1月時点で約1億2643万人で、09年を頂点に5年連続で減少した。国立社会保障・人口問題研究所は60年には8674万人に落ち込むと試算する。
 創成会議は、地方の人口が急減する一方、保育所の不足など子育て環境が整っていない東京は出生率が極端に低いと懸念を示す。都会も地方もどちらも減るというのでは、八方ふさがりだ。歯止めの必要性は待ったなしといえる。
 創生本部は60年時点で1億人程度の維持を目標とする。東京一極集中を是正し、地方で安心して子育てできる環境を実現するという。
 安倍晋三首相は「ばらまき型の対応はしない」「大胆な政策を、スピード感を持って実行する」と強調するが、言葉だけが躍っている観を否めない。
 これまで政府が地域活性化の名目で実施した施策は数多い。テクノポリスや頭脳立地は掛け声に終わり、ふるさと創生資金は単なるばらまきだった。鳴り物入りで始めた構造改革特区が効果を上げた話は聞かない。地方の実情を見ず、霞が関が卓上で考えることの限界の表れだ。
 だとすれば、真の地域活性化は、地域の主体性を尊重し、政府は後方支援に徹することではないか。創生本部は5カ年計画と60年までの長期ビジョンをつくり、自治体を支援するという。具体的にはこれからだが、国が妥当性を判断する局面を極力排したい。国のひも付きでない、省庁縦割りの影響を除いた財政支援を検討してほしい。