<社説>原発ゼロ1年 脱依存政策へ舵を切れ


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 福井県の関西電力大飯原発4号機が定期検査入りし、国内の全48基が停止してから15日で1年になった。国内で最初の原発が営業運転を始めた1966年以降、初めて稼働原発ゼロで夏の電力需要のピークを乗り切った。つまり日本が原発ゼロでの電力供給が年間を通して可能であることを証明したことになる。これを機に政府は脱原発へ舵(かじ)を切るべきだ。

 またエネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」がこのほどまとめた試算によると、原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で、太陽光発電とほぼ同水準、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いことが分かった。原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含まれていない。さらにコスト高になる可能性がある。
 政府がことし4月に閣議決定したエネルギー基本計画では原発を「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉」と位置付け、再稼働に積極的な姿勢を示した。米企業系の試算を見ると「運転コストが低廉」との政府の主張は覆る。また福島第1原発事故で広範囲に放射能が拡散され、多くの住民がいまだ避難を余儀なくされていることを考えれば「安定供給性」があると言えるはずがない。使用済み核燃料と放射性廃棄物が大量に発生し、処分方法もなく、置き場所にも困る現状を見れば「効率性」があると考える理屈も見当たらない。
 それなのに政府は基本計画で、季節に左右されない基礎的な電源を意味する「ベースロード電源」に原発を位置付けた。自民党は2012年に「原子力に依存しない社会の確立」を掲げており、明らかに公約違反だ。原発ゼロで1年が経過し、原発コストが低廉でないことが判明した以上、基本計画そのものを見直すべきだ。
 政府は原子力規制委員会の新規制基準適合の判断を受け、川内原発再稼働の方針を決めた。地元の同意を得れば今冬にも運転が再開される見通しだ。8月の全国世論調査を見ると、原発再稼働に反対は57・3%で、賛成の34・8%を上回った。この調査結果を見ても国民が求めているのは再稼働ではなく、明らかに原発ゼロだ。