<社説>基準地価上昇 二極化と投機に目配りを


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 県が発表した2014年7月1日時点の基準地価によると、林地を除く平均変動率が21年ぶりに上昇した。

 上昇に転じた背景として、人口増加や好調な観光などによる景気拡大が挙げられる。一方、国立公園に指定された座間味、渡嘉敷両村、新石垣空港が開港した石垣市を除いて離島の地価は横ばいか、下げ止まっていない。地域の二極化に注意を払わなければならない。
 好調な観光に支えられ、不動産投資が活発になっている点も特徴だ。沖縄観光の先行きの明るさを反映しているのだろうが、不動産投機が加熱してバブルを招かないように、国や県はしっかり監視する必要がある。
 人口増が地価上昇に結び付いているとみられるが、手放しで歓迎できない。140万人余の人口のうち8割が那覇を中心とする本島中南部に集中している。本島北部や離島では過疎化が進む。過疎と過密のいびつな二極化構造が、基準地価にくっきり表れている。中北部と離島は下落傾向にある。地価を回復するには、島々の個性を生かした地域づくりを真剣に考えるべきだろう。
 住宅地は16年ぶりに上昇に転じた。消費税増税前の駆け込み需要で上昇した後、引き続き需要が続いている。県外からの投資目的や別荘としての需要の高まりも押し上げ効果となっている。
 沖縄の持ち家率は50・2%で全国46位(2008年度)。1人当たり県民所得(11年度)は最下位の201万8千円。前年度より7千円減っている。地価上昇に所得の上昇が追い付かなければ、土地の取得が難しくなり、家を持てる人と持てない人の資産格差が広がることを懸念する。
 商業地の上昇は好調な観光に支えられている。不動産投資信託(REIT)と呼ばれる金融商品を通じた売買や直接投資が目立つ。国内大手ファンドによるDFSやメルキュールホテル沖縄那覇の買収、台湾企業による旧国映館跡地の買収が相次いでいる。投機マネーの動向に十分注意を払うべきだ。
 県内の建設業の人出不足から工期が遅れ、土地取引が消極化する可能性がある。消費税率を10%に引き上げた場合も影響するだろう。確かな経済・財政政策、魅力ある地域づくりに裏付けられた地価であることが望ましい。