<社説>沖縄三越閉店後 散策、交流できる街を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 最も高級な商品が並ぶ店舗だった。屋上の遊園地が人生最初の行楽地だった人も多かろう。沖縄三越が閉店した。

 百貨店事業は各地で苦戦を強いられている。中心商店街も全国各地で空洞化が進行中だ。そのどちらの要素も持つ沖縄三越は、二重の意味で厳しい環境にあった。
 だがここは沖縄の商業の象徴であり、中心である。衰退したままでは周辺への影響も大きい。リウボウホールディングスなどが出資して新体制で事業を引き継ぐが、斬新な発想で新たな商業集積をつくってほしい。
 沖縄三越にはテナントを含め約600人が働いていた。希望者の6割は再就職先を確保したが、残り4割は未確定だ。退職者を対象に762人の求人が寄せられたが、8割はパートで、フルタイムは2割にとどまる。沖縄労働局や県、関係企業は希望に沿った再就職先確保に全力を挙げてもらいたい。
 沖縄三越のある国際通りは近年、観光客向けの土産品店街に様変わりした。嘆く声は多いが、郊外型大型店に押され各地の商店街が軒並み空洞化する中、新たな購買層を発掘したのは企業努力の結果であり、一概に否定はできない。ひとたび「シャッター通り」化すれば再生は容易でなく、それを避けた知恵として一定の評価もできる。
 だが、長期的に見ればやはり地元客確保が欠かせない。米中枢同時テロ後の風評被害は記憶に新しい。観光客頼みはその意味で危うさを持つ。旅先では地元に人気の店に行きたくなるものだ。その意味でも地元客と国内・海外観光客が集い、交流する街こそが真の意味で長続きする魅力を持つはずだ。
 周辺では数々の再開発計画が進行中だ。沖映通りを挟んだ牧志1丁目で再開発が浮上しているし、那覇市樋川の農連市場も大規模な再開発を予定する。新那覇市民会館も久茂地小学校跡地に建設される。いずれも18年度中の完成を見込む。あと数年でこの一帯は風貌を一新するのだ。
 那覇市は2015年度に新たな中心市街地活性化計画を策定する予定だ。識者を交えた計画策定の組織を既に発足させている。
 鍵は散策でき、定住でき、繰り返し訪れる街になるか否かだ。バリアフリー化は欠かせない。トイレを整備し、街路樹を大胆に増やすのも一案だ。定時公共交通の導入も検討し、地元客を誘引する魅力ある新機軸を打ち出してほしい。