<社説>江渡防衛相来県 汗流すべきは民意の実現


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 江渡聡徳防衛相が就任後、初めて来県した。仲井真弘多知事から垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ24機全ての県外配備や普天間飛行場の5年以内の運用停止など計11項目について求められ「県民の要望だと考えている。目に見える形で一歩一歩進めたい」と述べた。

 しかし知事が求めるオスプレイ訓練の県外移転については「本土における訓練基盤や拠点の整備も進めていきたい」と述べるだけで、具体的な場所や時期は言及しなかった。訓練移転の方向性すら明示できないのに、24機全ての県外配備など実行できるはずがない。「一歩一歩進めたい」と表明したが、単なる口約束と言わざるを得ない。多くの県民には空手形と映ったはずだ。
 沖縄の基地問題への取り組みについて、江渡防衛相は知事との会談や記者団とのやりとりの中で何度も同じ言葉を口にしている。「可能な限り汗を流させていただきたい」。東京での記者会見でも繰り返し述べているが、基地負担軽減で実効性ある担保を示さずに「汗を流す」と言われても空虚に響くだけだ。
 江渡氏は2週間前、県が求めている普天間の5年以内の運用停止の起点について「決まっていない」と述べていた。17日に菅義偉官房長官が「2月と考えている」との見解を示したため、長官と同じく「2月」と発言を修正した。政治家としてあまりにも言葉が軽い。
 在沖米軍トップのウィスラー四軍調整官は5年以内の運用停止の実現性について「答えはノーだ」と明確に否定している。政府は普天間のオスプレイの佐賀空港への暫定移駐を提案したが、米側が難色を示したため見送る方針を示している。運用停止も米側が否定しているのに、それでも可能だと主張するのなら、その実現性を具体的に示してほしい。それができなければ県民を愚弄するだまし討ちとしか受け取れない。
 江渡氏は今回の来県で普天間飛行場の移設に伴う新基地建設の作業が進む名護市辺野古を訪れた。しかしヘリに搭乗しての上空からの視察だ。菅官房長官も武田良太防衛副大臣も上空視察だった。これでは物見遊山ではないか。政府は世論調査で8割を超える人が求めている「移設作業を中止すべきだ」との民意に耳を傾け、計画見直しにこそ本気で汗を流すべきだ。