<社説>新騒音指標 住民実感に見合った評価を


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 航空機騒音の新たな環境基準Lden(エルデン、時間帯補正等価騒音レベル)が2013年度に導入され、防衛省は基地周辺の住宅防音工事区域の見直し調査を検討している。住民実感に合った騒音評価を第一義に見直すべきだ。

 県はエルデンに基づく13年度の航空機騒音測定結果をまとめた。嘉手納基地周辺の18測定局のうち8局、普天間飛行場周辺の13測定局のうち1局で環境基準を超えている。
 両基地周辺で騒音が常態化している実態があらためて浮かび上がるが、新たな指標に基づく今回の結果に関し、識者が「(ジェット機など)固定翼機の多い嘉手納と比べ、普天間で騒音評価が低めに出る傾向がより顕著になった」と指摘していることは気掛かりだ。
 測定結果を従来の騒音指標であるW値(WECPNL、うるささ指数)に当てはめると、環境基準超えは嘉手納周辺が9局、普天間は2局とそれぞれ増える。
 W値は騒音の最大の大きさなどに基づいて計算されるが、エルデンは地上の騒音を含めた騒音の総量を相対的に評価する手法だ。国際的にも導入が進んでいる。
 ただ音の強さを表す単位のデシベルで見ると、エルデンの値はW値よりも平均13ポイント低くなるため、「実態は変わらないのに騒音が軽減したと誤解されかねない」との指摘は根強い。騒音に詳しい渡嘉敷健琉球大准教授によると、昼間の学校施設や保育園などでは低めの評価となる可能性もある。
 防衛省の検討作業に対し、自治体や住民からは防音工事の対象が縮小されることへの警戒も出ている。防衛省は今後調査内容を検討するが、物差しの変更で被害が過小評価されるようなことがあってはならないのは当然だ。
 普天間飛行場周辺では今月、午前0時をすぎてもオスプレイなどが飛行する異常事態が続いたが、エルデンやW値は固定翼機を前提とした基準であるため、オスプレイや回転翼機などの低周波音の評価には「なじまない」(県環境部)という側面があることも考慮せねばならない。
 もとより軍用飛行場周辺の爆音被害は数値だけでは測れない。防衛省に対し、県は住民の理解を得られる評価方法を求める考えを示している。新基準で住民が不利益を被るような事態を招いてはならない。住民の目線で被害の実態を把握し、きちんと評価すべきだ。