<社説> 女児遺体遺棄 地域全体で子ども見守ろう


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 11日から行方不明になっていた神戸市長田区の生田美玲さん(市立名倉小1年)が自宅近くで遺体で見つかり、遺棄したとして近くに住む47歳の男が逮捕された。家族や多くの人々が抱いてきた「無事であってほしい」との願いは打ち砕かれ、最悪の事態となった。極めて残念というほかない。遺体が切断されるという残忍な犯行に強い憤りを禁じを得ない。

 美玲さんの自宅から約100メートルの茂みで遺体が発見されたのは行方不明から12日後のことだ。兵庫県警は周辺の空き家などは調べていたが、茂みは捜索していなかった。遺体が入ったポリ袋の中には診察券やたばこの吸い殻が残されていた。遺留物があったため、DNA鑑定などで容疑者にたどり着けたが、遺留物がなかったら捜査は壁にぶつかっていたかもしれない。防犯カメラには美玲さんの後方に容疑者が映っており、県警は遺体発見前に容疑者に接触し、家の中を調べたが異変に気付けなかった。捜査に落ち度はなかったか、検証が必要だ。
 美玲さんは自宅から半径数百メートルのごく限られた範囲の住宅地を歩いているうちに行方不明になっている。コンビニエンスストアもあり、車の往来もある地域を子どもが安心して歩けないとすれば、こうした社会は不健全であり、是正しなければならない。
 警察庁によると、13歳未満の子どもが被害に遭う刑法犯の認知件数は2004年以降は減少傾向だったが、13年は2万6939件で、前年より1327件増えている。沖縄県内で13年に確認された子どもや女性への声掛けなどの脅威事案は256件だった。不審者の声掛け事案が86件と最も多く、被害者の約4割は女子小中学生だった。沖縄市内ではことし4、5月に登下校中の小中学生に「おいで」などと声を掛ける7件の不審者情報が寄せられている。誘拐や連れ去りなどの凶悪犯罪につながる可能性があり、警戒が必要だ。
 県警は子どもが危険を感じた時に逃げ込める民家や店舗などを対象に「子ども110番の家(太陽の家)」の委嘱を進めている。ことし8月時点で7109軒が登録されている。子どもたちを危険から守るには地域全体で目を光らせる必要がある。子どもたちが健やかに安心して過ごせるよう、親や地域の大人が見守りを重ねたい。二度と悲しい事件が起きないためにも。