<社説>選挙費用未報告 これでは議員と呼べない


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 法律を守れないのでは議員になる資格はないと言わざるを得ない。9月7日に実施された統一地方選に立候補した460人のうち、10市町村の29人が選挙運動費用収支報告書を期限の22日までに提出していなかったことが本紙調査で分かった。

 公職選挙法は選挙の翌日から15日以内に選挙管理委員会に収支報告書を提出するよう義務付けている。有権者に対し、選挙運動の金の流れを透明にすることが目的だ。当然、立候補者は法の趣旨を理解し、選挙後の提出に備えなければならない。
 残念ながら本県ではこの規定が一部で軽んじられており、今年2月の本紙報道で問題が表面化した。県選挙管理委員会が直近の首長選挙や議会議員選挙を調べたところ、67人の未提出が判明した。県選管は「公職候補者としての自覚を持ち法令順守に努めてほしい」との談話を発表した。
 それにもかかわらず、今回の選挙でも期限内に提出しなかった立候補者がいたのは信じ難い事態だ。「忙しかった」「県外にいて提出が遅れた」などと答えているが、これでは有権者の理解を得ることはできない。4年前の選挙でも期限を守らなかった現職議員がいる。順法意識の欠落を指摘されても仕方がない。「提出しなくてもいいと聞いたから出さなかった」と答えた立候補者もいた。公職選挙法を軽視するような発言であり、到底容認できない。
 前回の統一地方選などでは17市町村の選管が収支報告書の要旨を公表する手続きを怠っていたのに対し、今回は全ての選管が公表の準備を進めている。立候補者説明会では提出義務や罰則などを説明し、期限内の提出を促すなどの具体的な取り組みもあった。選管の対応に改善があったことは評価できる。しかし、まだ不十分な面がなかったか。未提出者の一掃に向けたさらなる対応を求めたい。
 元兵庫県議の不自然な政務活動費の支出が注目を集めている最中の選挙だった。政治家は金の問題で有権者に不信感を与えてはならないはずだ。収支報告書の未提出に対しても、有権者は選挙の公正性に疑念を抱くことを自覚すべきである。
 順法意識が欠落した議員に、行政当局に対する厳正な監視は期待できない。基本的な法律を守ってこその議員であることを肝に銘じてほしい。