<社説>再生エネルギー 普及を止めてはならない


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 送電網の容量限界から電力会社が再生可能エネルギーの買い取りを中断する動きが出ている。政府は固定価格買い取り制度の抜本改定に着手したが、再生エネルギー普及に水を差してはならない。

 太陽光発電の導入が急速に進んだ一方で、送電設備の容量が不足しているという。電力会社によると、電力の安定供給には需要とのバランスが重要だが、太陽光発電などの新規買い取りを続けて供給量が需要を大幅に上回ると需給バランスが崩れ、停電を招く恐れがある。
 九州電力は九州全域で買い取り契約の受け付けを中断した。東京電力なども一部で受け付けを制限している。沖縄電力は住宅用を含む太陽光発電の新規申し込みを一時保留していた。現在は太陽光に接続上限を設定している。
 制度は再エネ普及の有力な手段だったはずが、電力設備の事情で受け付けが制限されるという制度の欠陥が露呈した形だ。
 太陽光の発電事業者や導入促進を掲げる自治体は「事業を今さら中断できない」と動揺している。当然だろう。再エネ普及に取り組む県内の自治体や事業者なども先行きを不安視している。
 固定価格買い取り制度は太陽光や風力などの導入推進へ、再エネ事業者が発電した電気を国が定めた固定価格で長期にわたり買い取るよう電力会社に義務付けている。太陽光発電の出力容量が急増したのは価格引き下げや制度厳格化を前に、ことし3月までに申請が殺到したことも背景にあるようだ。政府の見通しも甘かった。
 政府は買い取り量の上限設定や価格の水準、算定方法などを議論するというが、現状を抜本的に改善するには送電網の増強などが必要となろう。送電網増強には数兆円かかるとされ、国民の負担増を懸念する声もある。だが電力会社は国民的合意のない原発再稼働に振り向ける資金があれば、送電網整備に投資すべきではないか。
 識者からはスマートグリッド(次世代送電網)や蓄電池、発電量予測などの技術開発でコストを抑制できるとの指摘もある。政府が技術開発や金融面などで強力に支援すべきだ。
 そもそも買い取り制度は東電福島第1原発事故を受け、原発依存の脱却を目指してつくられた。地球温暖化が深刻化する中、再生エネルギー移行は世界的潮流でもある。流れに乗り遅れてはならない。