<社説>空中給油機飛来 見せ掛けの負担軽減が露呈


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 これで何の負担軽減になるのか。小ざかしいパフォーマンスはやめてもらいたい。

 山口県の岩国基地へ移駐したはずの米海兵隊のKC130空中給油機が、米軍普天間飛行場へ飛来した日が少なくとも9日あったことが分かった。
 同機は1カ月前、移駐を終えているので3日に1回は飛来した計算になる。在沖米海兵隊は移駐後も沖縄で訓練を続ける方針を示しており、本当に負担軽減につながるのか疑念があった。案の定、負担軽減には程遠い状況が露呈したといえよう。
 羊頭狗肉(ようとうくにく)のような見せ掛けの負担軽減策ではなく、日米両政府は一刻も早く米軍普天間飛行場を閉鎖し、返還すべきだ。
 KC130の最初の飛来は移転完了後の2日後だ。9月15日と25日には、着陸直後に再加速し離陸するタッチ・アンド・ゴー訓練を実施しており、午後10時以降の着陸もあった。
 日米両政府が繰り出す負担軽減策は、形だけのことが多い。米軍嘉手納基地でも戦闘機の訓練の一部をグアムなどへ移転したというが、外来機の離着陸は増えた。
 KC130の飛来調査は宜野湾市や本紙の目視によるものだ。正確な数字を把握し、日米両政府に実のある負担軽減策を求めるためにも、県は飛来回数や騒音軽減は図られたかどうか詳しく調べる必要がある。
 安倍政権はKC130の岩国移駐を沖縄の基地負担軽減策の一つと位置付け、内閣改造時の会見でも安倍晋三首相は「学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の固定化は絶対にあってはならない」と強調した。
 そうであるなら、負担軽減策としていったん移駐したKC130が再び普天間へ飛来することなど絶対にあってはならない。日本政府はそれをやめるよう求めるのが筋ではないか。
 「政府は沖縄の基地負担軽減に一生懸命取り組んでいます」。国民にそう印象付け、辺野古移設を容認する全国世論を形成したいというのが安倍政権の本音ではないのか。
 部隊は移っても沖縄で訓練を続けるようなら、KC130の岩国移駐は負担軽減策でも何でもない。普天間でも、岩国でも騒音をまき散らすだけだ。部隊ではなく、基地そのものを国外、県外へ移すことが本当の負担軽減だ。