<社説>御嶽山噴火 観測と避難対策再考を


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 活火山はいずれ噴火する。私たちはいつの間にか、その認識が薄れていたのではないだろうか。

 長野、岐阜県境の御嶽山(3067メートル)が噴火し、登山者ら31人が山頂付近で心肺停止になった。
 付近は有毒ガスの発生で28日午後、捜索が中断された。まだ山頂付近にとどまっている人がいて、負傷者も多数に上るとみられる。被害者の救出活動に全力を期してもらいたい。
 火口から4キロ程度の範囲で大きな噴石の飛散の危険や、風によって居住地域近くまで影響を及ぼす恐れがあるという。十分な警戒が必要だ。
 「日本百名山」の一つに数えられる御嶽山は、全国に110ある活火山のうち24時間体制で観測する「常時観測火山」の一つだ。地震計や高感度カメラ、衛星利用測位システム(GPS)などの機器で監視している。
 今月中旬に山頂付近で地震活動が観測され、気象庁も火山情報を流した。しかし、地核変動など噴火の前兆となるデータに変化がなかったため、噴火時の警戒レベルは「平常」を意味する「1」のままだった。
 噴火予知活動の在り方に疑問が残る。気象庁は、噴火から半日経過しても、どこで噴火したか把握できなかった。国の火山観測体制が縮小されたため、御嶽山の観測を縮小せざるを得なかったと指摘する専門家もいる。
 内閣府の有識者検討会は昨年、政府が火山専門の調査研究機関を設置したり、火山の専門家を育成したりするなど観測体制の強化の必要性を提言した。「火山の噴火対策は地震に比べて遅れている」(検討会座長・藤井敏嗣東京大名誉教授)のが現状だ。
 御嶽山は山小屋以外に噴火から登山者の身を守る場所がほとんどない。被害者の多くは山頂付近の登山道周辺で見つかっている。観測体制の強化に加え、被害を少なくするための避難対策は万全だっただろうか。
 日本は世界の活火山の7%が集中する火山国だ。御嶽山噴火を受け、再稼働に向けて手続きが進んでいる九州電力川内原発は、より慎重な対応が求められる。川内原発の周辺には活火山群が分布しているからだ。
 今回の御嶽山の噴火は、これまでの噴火に対する観測体制と避難対策に再考を迫っている。直ちに改善すべきだ。