<社説>非婚家庭支援 法改正で不平等なくせ


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 婚姻歴がないひとり親家庭が税制上、不利益を被り、生活が一層苦境に追いやられている。そのような不平等を放置してはならない。

 母子世帯の母親らでつくる「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」は、所得控除の対象となる寡婦(寡夫)の定義に婚姻歴がないひとり親を含めるよう、所得税法の改正を国に求める意見書の採択を県議会や那覇市議会に陳情した。
 寡婦控除は配偶者と死別、離婚したひとり親家庭を対象としており、非婚家庭には適用されていない。そのため、収入に応じて算定される認可保育園の保育料や公営住宅の家賃の負担が増え、生活を圧迫している。
 「しんぐるまざあず-」は実例を挙げ、寡婦控除を受けることができない非婚家庭は控除を受けている家庭に比べて年間35万円もの負担増になっていると報告している。結婚歴がない故に多額な金銭的負担を強いられるのは不合理である。
 寡婦控除は主に戦争で夫を失い、扶養家族を抱えて生活に困窮する女性を支援するため、1951年に創設された制度である。創設から63年を経ており、家族形態や子育てを取り巻く環境は大きく変化している。既に制度の見直しを検討すべき時期にきている。
 非婚家庭にも寡婦控除を適用し、保育料や公営住宅の家賃負担を軽減する「みなし適用」を導入する自治体が増えている。2011年度の宜野湾市を皮切りに、県内では現在、23市町村が「みなし適用」を実施している。所得税法改正による非婚家庭への寡婦控除適用が社会的要請になっていることの表れだ。
 日本弁護士連合会は非婚家庭への寡婦控除不適用を「法の下の平等を定めた憲法に反する」との見解を示している。速やかに法改正に取り組み、不平等を是正すべきだ。法改正を待たずとも「みなし適用」を実施していない自治体は導入を進めてほしい。
 「子どもの貧困」の観点からも寡婦控除の適用は欠かせない。日弁連は子どもの成長や進学・就職への影響に触れ「最も低収入である非婚母子世帯に対する寡婦控除の不適用は、間違いなくそこで生活する子どもの不利を、固定もしくは拡大させている」と指摘している。
 ひとり親世帯率が全国平均の2倍の沖縄ではより重視すべき指摘である。子どもを貧困から救うためにも所得税法の改正を急ぎたい。