<社説>水道広域化 離島の負担分かち合いたい


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 県が沖縄本島の周辺離島8村と水道事業の広域化に関する基本合意を年内にも結ぶ。離島住民の負担軽減には、県全体で負担を分かち合うという視点が欠かせない。

 一般家庭などに水を送る水道事業は原則、市町村が経営することになっているが、本島ではほとんどの市町村が独自の水源を持たない。「水がめ」が集中する北部からまとめて水を引いた方が効率的で、本島22市町村と伊江村には、県企業局が水源開発から浄水処理までを行い、水を供給している。
 一方、離島自治体はそれぞれ川からの取水や海水淡水化などの水道事業を担う。水源に恵まれない地域が多く、事業規模や施設の維持管理面などから水道料金はどうしても割高となるが、その格差の大きさを直視する必要がある。
 県によると2012年度の10立方メートル当たりの水道料金は本島平均が1265円だ。広域化の対象となっている渡嘉敷、座間味、粟国、渡名喜、南大東、北大東、伊平屋、伊是名の8村平均は2619円と本島の2倍で、最も高い北大東は3535円と2・8倍にもなる。
 県内で最も安い東村(630円)とは実に5・6倍だ。標準世帯の水道使用量(月16立方メートル)で考えると、月に4600円余も違うことになる。しかも本島と離島の格差はこの十数年で拡大傾向にあるという。是正は喫緊の課題だ。
 8村は料金を軽減するため一般会計から水道事業に予算を繰り入れるなどしており、繰入比率が5割近いところもある。離島側は財政や技術基盤の安定化に向け、事業や施設の一部統合を図る広域化を要望し、県と議論を続けてきた。県は2021年度までに広域化を完了させる計画だ。
 ただ実現にはもちろん、事業統合により離島のコストを分担することになる本島の自治体や住民の理解が欠かせない。広域化に伴い、23市町村では水道料金の引き上げも予想され、県企業局の試算では上げ幅は標準世帯で月額50円程度と想定される。
 県は振興計画の柱の一つに離島の不利性克服を掲げ、生活環境や交通、教育や医療、福祉などのあらゆる分野でユニバーサル(一律)サービスの提供に努める方針を掲げている。合意形成に向けて主導的役割を果たしてほしい。住民側にも小規模離島の生活を県全体で支えていくという視点で、負担を分かち合う姿勢が必要だ。