<社説>御嶽山噴火と防災 検証尽くし備えに生かせ


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 御嶽山の噴火から10日を迎えた。死者は51人を数える。人的被害は1991年に雲仙普賢岳で起きた火砕流で犠牲になった43人を上回り、戦後最悪の火山災害となった。

 噴火の前触れをどこまで正確に察知して周知できるのか、登山者を守る万全の備えとは何か。110もの活火山を抱える火山大国・日本の防災対策が問われている。
 噴火は止められなくとも、被害を抑える対策は強化できる。被害をしっかり検証し、備えに生かしてもらいたい。
 噴火対策の弱さを示すデータがある。噴火の際、飛散する噴石から登山者を守る避難壕(シェルター)を設置している活火山は常時観測対象の47火山のうち、浅間山や阿蘇山など10火山しかないことが分かった。
 御嶽山に避難壕はない。死者51人のうち、噴石が頭や首などを直撃した「損傷死」が50人を占めた。ほとんどの死者は山頂付近の屋外で倒れていた。噴火自体は小規模だったが、山頂付近に大勢の人がいたことが大惨事につながった。身体にあざが重なり、5~6カ所も骨折した人もいた。頭をかばい、手に傷を負った人が多かった。
 御嶽山頂には登山者が身を隠せる場所は山小屋以外には乏しく、少なくとも12人に上る行方不明者は火山灰などに埋もれたままのようだ。山頂や登山道近くに避難壕があれば、駆け込んで難を逃れた人が多くいたかもしれない。
 1979年の噴火で3人が死亡した阿蘇山は翌年から設置が進み、避難壕は15カ所あるが、年間30万人が訪れる富士山の山頂にはない。
 宿泊できる山小屋や落雷を避ける避難小屋とは異なり、避難壕はコンクリート製の堅固な構造物になっている。景観の悪化や予算面の懸念があっても、人命を優先し実効性のある噴火対策として避難壕設置を推進すべきだ。
 安倍晋三首相は臨時国会で、噴火予知の精度向上と防災を見据えた火山の監視強化に取り組む考えを示しているが、避難壕設置や山小屋の構造強化など施設面の対策も強化してもらいたい。
 今回の御嶽山噴火は行方不明になった登山者を確定するまでに時間を要した。登山ブームが続く中、行方不明者を確定させるまで時間を要すれば、救助の遅れにもつながりかねない。登山者を正確に把握し、防災にも生かす制度の確立も求められている。