<社説>後期高齢医療支援 給与水準に応じた負担を


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 厚生労働省は75歳以上の医療費を賄うために現役世代が支払っている支援金制度で、給与水準が高い大企業の従業員や公務員の負担を段階的に増やす検討を始めた。中小企業従業員の負担を軽減する狙いがある。もともと支援金は保険加入者の人数によって分け合う仕組みで、給与水準が低い協会けんぽの負担が相対的に重くなる傾向にある。今回の給与水準に応じた負担割合に見直すとの方針は妥当な判断だと受け止めたい。

 後期高齢者医療制度で患者負担を除く給付費の財源は現在、高齢者保険料が約1割、現役世代の保険料などで賄う支援金は約4割、残り5割は公費だ。現役世代に過度な負担がかからないよう、現役の人口減を反映させ、高齢者の割合を徐々に引き上げる仕組みだ。
 現行制度では高齢者の保険料の伸びが現役世代を上回る構造だ。給付費全体に占める高齢者の保険料の割合は制度当初の2008年は10%だったが、現在は10・73%に増加しており、今の仕組みでは24年度には12・79%まで増加する。このままでは高齢者への負担が増大してしまい、何らかの改善措置が必要なのは明らかだ。
 現役世代の負担を増やし、高齢者の負担を抑制する必要がある。現役世代の支援金は現在、3分の2が人数に応じた負担で、3分の1が給与に基づく総報酬割だ。総報酬割を現行の3分の1から3分の2に拡大し、その後に全額に移行するのが今回の検討案だ。
 全面的に総報酬割にした上で、65~74歳の負担する支援金でも加入者数に応じて大企業などの負担を増やすことも検討されている。この場合、協会けんぽの支援金額が2400億円減る一方、健保組合全体では1500億円増える。これに伴って国の補助が減らせるため、財政が悪化している国民健康保険に投入したいようだ。
 この方針は厚労省が6日の社会保障審議会の部会に提案したものだ。政府の社会保障制度改革推進本部が進める都道府県ごとの医療費支出目標を設定する方針の中でも健保組合の支援金負担を増やす考えが示されている。これは医療費抑制という財政支出削減が狙いだ。国の財政負担を軽減し、民間への負担を増大させることだけに主眼が置かれれば大企業も納得しないだろう。方針の中身を国民に丁寧に説明していく必要がある。