<社説>公共交通支援 鉄軌道導入の好機にしたい


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 国土交通省は地方の公共交通事業者に対する出資制度を新設する。

 高齢者や免許のない若年層にとって、通院や通学、買い物など移動手段として公共交通が果たす役割は大きい。
 出資であれば、補助金に比べて事業者が使い道を自由に決めやすくなるので、利便性の向上が期待できる。
 財源には財政投融資を活用し、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じて資金提供する。鉄道網が充実している県外と比べ、沖縄は鉄道のない唯一の県として放置されてきた。支援機構は積極的に資金提供してもらいたい。
 戦後69年、自動車中心の沖縄の交通体系は限界にきている。基幹を鉄道・モノレール、支線をバス・タクシーという有機的な交通体系の整備に着手する時期だ。
 中南部の交通渋滞は大都市圏並みで、経済損失は1キロ当たり年間1億1500万円に上るとの試算もある。鉄道に替わるはずのバスの利用者は、日本復帰以降ずっと減少傾向にあり、3分の1に激減した。増える車に道路整備が追い付かず、交通渋滞がバスの遅延を招き、客離れが運賃を引き上げ、経営難が路線を減らす悪循環に陥っていた。
 しかし、バスの現在地が分かるバスロケーションシステムやノンステップバス、「わった~バス党」の広報啓発活動など近年の利用促進策によって、ようやく2013年度の利用者数が前年度比1・6%増の2583万9千人となり、バス利用者が上昇に転じた。
 さらに沖縄初のIC乗車券「OKICA(オキカ)」が20日から沖縄都市モノレールに導入される。来春には沖縄本島の路線バスにも導入予定だ。新たな出資制度を使い、全国で普及する交通系カードと相互利用できるようにすれば観光客にとっても便利だろう。
 新たな制度の仕組みは、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と地元自治体、企業が設立する新会社にLRT(次世代型路面電車)などの鉄軌道をはじめ、電気自動車(EV)バス、離島航路用の高速船を保有・管理させることが可能だ。
 新会社は資金力のない民間事業者に車両や船舶をリースすることで事業者側の負担を軽くする。この仕組みをうまく使って、沖縄の総合的な公共交通体系を整備する好機としたい。