<社説>那覇市長選 基地、保育で活発な論戦を


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 県都の針路を指し示すリーダーは誰か。市民にとって重要な選択の機会がめぐってきた。この貴重な機会を大切にしたい。

 11月16日投開票(同9日告示)の那覇市長選の顔ぶれがほぼ固まった。自民党県連は那覇市長選候補者選考委員会を開き、前副知事で弁護士の与世田兼稔氏(64)の擁立を正式決定した。既に副市長の城間幹子氏(63)が出馬を表明している。両氏による一騎打ちの公算が大きい。
 異例ずくめの選挙戦となろう。保守分裂により、構図が従来の保革対決から一変するからだ。
 城間氏は現職の翁長雄志氏の後継で、現職の保守系地盤、保守系那覇市議とともに革新陣営も推す、いわば保革相乗りの候補となる。与世田氏は自民県連と自民党本部が推し、公明党との連携を模索する。前副知事であり、仲井真弘多知事の陣営という側面も色濃い。知事選での仲井真、翁長両氏の代理戦争という色彩も帯びそうだ。
 与世田氏は辺野古移設について「那覇市長選の争点になり得ない」と述べたが、県都の市長は県内市町村のリーダーである。県内最大の政治課題である米軍基地問題について姿勢の明示は避けて通れない。基地問題の中核をなす辺野古移設の是非も大きな争点として論戦を交わしてもらいたい。
 一方で市の課題も山積している。中でも待機児童問題は待ったなしだ。潜在的な数も含めると千数百人に上るとの推計もある。保育士不足が背景にあり、対策が急がれる。両候補とも解消の時期を明示し、その具体策を競ってほしい。
 地域の活性化は言うまでもなく最大の課題だ。中心商店街の「地盤沈下」は言われて久しいが、足元では再開発の動きも出始めてきた。市民会館移設、農連市場再開発などといかに有機的に連携できるかが鍵となろう。両候補にはその方策も明示してもらいたい。
 前回、前々回で争点となった国保税の高さの問題は、那覇市をはじめとする県内自治体の研究の結果、沖縄戦により前期高齢者が他県に比べ大幅に少ない点が原因と判明した。自治体でなく政府が戦後処理として対処すべき課題だ。両氏とも国への働き掛けの道筋を示してほしい。
 近年、那覇市長選の投票率は低下の一方だった。今回は知事選と相まって注目度は極めて高い。投票率向上の好機であり、活発な論戦で大いに盛り上げてほしい。