<社説>ノーベル物理学賞 人類に貢献する画期的成果


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本の科学水準の高さと底力をあらためて内外に示す快挙だ。

 2014年のノーベル物理学賞に青色の発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇・名城大終身教授(85)、天野浩・名古屋大教授(54)、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)の3人の受賞が決まった。
 STAP細胞問題など暗い話題が続いていた日本の科学界に明るい光を取り戻す朗報を心から祝福したい。
 省エネで長寿命の照明に使われる青色LEDは照明器具に「革命」をもたらした現代社会に不可欠な技術とされる。赤色と緑色のLEDは1960年代に開発されたが、光の三原色の残る青色は素材の結晶作りが困難を極め、「20世紀中は無理」と指摘されていた。
 赤崎氏と天野氏は、世界中の研究者が諦めた窒化ガリウムの結晶化に86年に成功し、世界で初めて青色LEDを開発。日亜化学工業の技術者だった中村氏は窒化ガリウム結晶の量産化技術を独力で開発し、90年代に世界に先駆けて青色LEDの製品化につなげた。中村氏は青色半導体レーザーも開発し、同様に製品化された。
 過去のノーベル賞受賞者に共通するが、困難な研究にひるむことなく立ち向かい、それまでの常識を打破した3人の輝かしい成果は、後に続く国内の若い世代に勇気と希望を与える。関係者は大きな刺激を励みとし、日本の科学研究を一層活性化させてもらいたい。
 エネルギー効率に優れた青色LEDの開発価値はあらためて指摘するまでもないだろう。21世紀の省エネ社会を牽引(けんいん)し、地球温暖化対策への貢献が期待される。とりわけ今回、基礎研究から応用までを3人がカバーした意義は計り知れない。「人類に最も貢献」した発見・発明に贈られるノーベル賞にまさに合致した栄誉と言える。
 一方、中村氏は発明対価をめぐり日亜化学を提訴するなど、職務発明に関する日本国内の考え方を根底から揺さぶり大きな影響を与えたことでも知られる。受賞後の会見で中村氏は「独創的な研究には自由な環境が欠かせないが、日本には自由がない」と苦言を呈したことにも留意が必要だろう。
 今回で日本人のノーベル賞受賞は計22人となったが、政府関係者は手放しで喜ぶだけでなく、国内の研究環境の整備が喫緊の課題であることも肝に銘じてもらいたい。