<社説>10・10空襲から70年 軍備で平和は築けない


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 沖縄本島など南西諸島に甚大な被害をもたらした10・10空襲から70年になる。

 米軍は沖縄各地の飛行場や港湾などの軍事拠点の無力化を狙ったが、攻撃対象は軍事施設にとどまらなかった。民家のほか、病院や学校までもが無差別爆撃にさらされ、668人が死亡、768人が負傷した。那覇市では9割の家屋が焼失した。
 米政府は日本政府の抗議を受けて検討した結果、10・10空襲は無差別攻撃と認めた。しかし当時でも国際法違反になるため、日本には回答しなかったことが米公文書で明らかになっている。戦時下では、法は守られないのである。
 この悲惨な経験から学んだことは、軍備で平和は築けないということだ。それどころか、軍事施設の存在そのものが国民の命を奪う誘因となるのである。
 多大な犠牲を払って得た重い教訓を、この国は生かしているだろうか。安倍政権になって逆方向への流れが加速していることを危惧する。
 その一つは12月に施行される予定の特定秘密保護法である。政府が「安全保障に著しい支障を与える恐れ」があると判断した情報は秘密指定される。
 10・10空襲当時の国民には大本営発表しか情報がなく、正しい戦況を把握できなかった。戦況は悪化していたにもかかわらず、偽りの情報で国民を鼓舞し、欺いたことで被害は拡大し続けた。
 軍国主義の時代であっても、正しい情報を国民が知ることができれば、厭戦(えんせん)思想が芽生え、その後の展開は変わった可能性さえある。それほど情報公開は国民と国家にとって大切なことである。特定秘密保護法の施行は国民の「知る権利」をないがしろにし、戦前に逆戻りすることにほかならない。
 もう一つは集団的自衛権行使容認の閣議決定だ。日本が攻撃を受けずとも他国への攻撃を実力で阻止することで、国民が戦争に巻き込まれる危険性が高まる。在日米軍基地の集中する沖縄が攻撃対象になることは火を見るよりも明らかである。
 本紙社会面連載で10・10空襲体験者の牧野豊子さん(86)は「また世の中おかしくなってきた。政府が何を考えているか見抜く力を持たないと駄目」と指摘している。戦争に永遠に巻き込まれないために私たちは今、何をすべきかを真剣に考えたい。