<社説>大学連合 幅広い成果を期待する


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 県内全ての大学や短大など計11校が単位互換や共同研究などに取り組むコンソーシアム(連合組織)を設立した。幅広い人材育成に向けた成果を大いに期待したい。

 9月下旬に設立された「大学コンソーシアム沖縄」に県内全ての大学・短大と国立沖縄工業高等専門学校、沖縄科学技術大学院大学(OIST)が参加した。世界に通用する学生の育成、教員向け研修や社会人講座の開設、小中学校など教育現場との連携などに取り組むという。
 単位互換や共同研究などの取り組みはこれまでも個々の大学間で進められてきた。8月には琉球大、名桜大とペルーのパシフィコ大が「環太平洋大学コンソーシアム」の覚書を締結した。単位交換や交換留学、研究者交流などを進める計画だ。琉大は、英語力の高い学生を留学させるなどの独自のプログラム創設も検討している。今後の取り組みが注目されよう。
 大学間の共同体構築は全国的に進んでおり、世界的な流れでもある。大学コンソーシアム沖縄も2年ほど前から準備を進めていた。
 県内の高等教育機関が全て集うのは初めてで、価値あることだ。既に一般社団法人として登記も済ませ、代表に瀬名波栄喜名桜大前学長、副代表に大城肇琉球大学長が就くなど組織体制も固まった。
 11校の学生が社会の課題などについて議論する学生サミットの開催や、将来的には留学生派遣に向けた共同の奨学金創設なども目指すという。こうした大学間の垣根を越えた取り組みは画期的であり、ぜひ実現してほしい。
 今回の枠組みにOISTが加わった点も意義深い。世界最高水準の研究・教育機関を目指すOISTと県内大学の提携を求める声は強いが、その具体的な形はあまり見えなかった。提携のアイデアとしては、OISTの外国人研究者の英語教師アシスタントとしての各大学への派遣などが挙がっている。まずは一つずつ実績を重ね、内容を深めてもらいたい。
 国内の各大学は18歳人口の減少が深刻化する「2018年問題」に直面しつつある。人口減少が全国に遅れてやって来る沖縄でも、いずれ厳しい状況が訪れよう。その面でも大学間で多様に連携していくことの意義は大きい。東アジアの中心に位置するその特色を生かし、沖縄ならではの大学コンソーシアムの構築を待ち望みたい。