<社説>良生君募金達成 沖縄の肝心で手術成功望む


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 心筋炎後心筋症を患う松島良生(らい)君(12)の心臓移植の手術費用などを支援しようと取り組まれた募金活動が目標額の2億1500万円を超えた。本格的に呼び掛けを始めてから、わずか24日間で目標を達成できた。寄付運動の中心的な組織「らい君を救う会」のメンバーの熱意が多くの人々に共感を広げた。良生君を救いたいとの思いで多くの個人、団体、企業などが次々と趣旨に賛同し、浄財を寄せている。沖縄の思いやり精神である“肝心(チムグクル)”が健在であることの証左だろう。

 良生君が患っている心筋症は心臓の機能が低下していく病気で、完治には心臓移植が非常に有効な方法となっている。国内で臓器提供を求めれば約3年は待たなければならないという。良生君がそれまで体力を維持することは厳しく、米国での移植手術に望みをつなぐしかない。このため手術費用などで約2億1500万円が必要となり、良生君の両親の同級生、知人らが支援を呼び掛けた。
 2010年に施行された改正臓器移植法で、本人が生前に拒否していなければ、家族の承諾で15歳未満の脳死による臓器提供が可能になった。しかし、これまで15歳未満の脳死判定は4例にとどまっている。日本臓器移植ネットワークによると、10歳未満の子どもに心臓が提供されたのは20代の女性から提供された1例を含め2例。一方、15歳未満の心臓移植の待機患者は7月時点で全国に14人いる。提供者が現れるまでの期間が長期化することで、心機能が低下する恐れがあり、海外渡航による移植に頼らざるを得ないのが現状だ。
 今回の募金では11年に米国で心臓移植手術を受けた要(かなめ)美優(みゆ)さんを支援した「美優ちゃんを救う会」から募金の余剰金1億2500万円も寄せられた。今後も難病で移植手術が必要な子どもがいれば支援する必要がある。知り合いなどの有志が個別に組織を結成することも大切だが、基金の設置など継続的に寄付を募る仕組みを検討してもいいのではないか。
 良生君は12月に渡米し、移植手術に備える。記者会見で父親の良道さんは「善意で集まった命のバトンを受け取った。無事に手術を終え、元気に帰国することが恩返しだと思う」と感謝の言葉を口にした。無事に手術を終えた良生君の元気な姿を早く見たい。