<社説>いじめ認知減 解消率向上に力尽くせ


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 2013年度の文科省の問題行動調査で、沖縄の小中高校・特別支援学校のいじめ認知件数は539件で、前年度と比べ2999件減少した。

 いじめは、いじめられている子どもに耐え難い精神的、肉体的苦痛をもたらし、生きる権利を奪ってしまう重大な人権侵害だ。
 いじめ対策は防止、早期発見、対処といった三位一体の取り組みが大切だ。家庭、学校、地域社会が連携して、子どもを見守りたい。
 県内の認知件数の大幅減について県教育庁は「いじめは許されない行為だという認識が広がっている」と説明している。軽微な事例も報告した12年度の反動減の側面もあるようだ。
 むしろ認知件数の増減だけを注目するのではなく、いじめの解消率に目を向けるべきだろう。県内のいじめ解消率は82・4%。全国平均の88・3%に比べて5・9ポイントの開きがある。解消率向上に力を入れる必要がある。
 いじめを早期発見、防止するため、学校には「学校いじめ防止基本方針」の策定が義務付けられている。県内の策定率は小中学校は95%以上と高いが、高校が73・3%、特別支援学校は64・7%にとどまっている。「重大事態」が発生した際の調査を行うための機関を設置した自治体も4・9%だ。いずれも早急に策定、設置すべきだ。
 近年は携帯電話を使ったいじめが増えている。ネット上のやりとりは大人の目が届かず陰湿化する傾向にある。家庭で携帯電話の使用時間を決めておくことや、夜は保護者が預かるなど、常に保護者の目に届くようにすることが大事ではないか。
 いじめは児童生徒間の人間関係の軋轢(あつれき)から起きる。トラブルが、いじめにエスカレートしないように、子どもたちのコミュニケーション能力を高めることが重要だ。
 保護者と学校は、教育を通じてお互いを尊重し、他の子の権利を侵害したり、いじめを見て見ぬふりをしたりしないことを理解させ、自ら問題を解決する力を付けさせたい。
 保護者や教職員、専門家が子どもの情報を共有できるようにすることも大切だ。いじめに素早く対処できるからだ。子どもたちが伸び伸びと成長する環境を整えるのは大人の責務だ。社会全体でいじめ防止に取り組もう。