<社説>観光700万人台へ 延べ宿泊者数に目配りを


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 2014年度の入域観光客数が目標の690万人を上回り700万人台に届く勢いだ。21年度に1千万人という目標達成に向け順調に推移している。

 ところで沖縄観光は量だけでなく質の充実が指摘されて久しい。入域客の数を求めるだけでなく、人数に宿泊数を掛けた延べ宿泊者数にもっと目配りすべきだ。
 延べ宿泊者数を分析することで、沖縄観光の課題が見えてくるだろう。延べ宿泊者数が伸びれば、県内に落ちる観光収入の増加につながる。伸びるために、どのような施策が必要か。この視点から観光施策を展開すべきではないか。
 9月の入域観光客は前年同月比8・4%増の65万8700人で、9月単月として過去最高を更新した。14年4~9月(14年度上半期)の累計入域観光客数は前年同期比10・3%増の372万8100人となった。県は、このまま推移すれば14年度は目標の690万人を超え700万人は見込めると見ている。
 県観光政策課は、航空路線の拡充やクルーズ船の寄港増のほか、円安も手伝って観光客数が堅調に推移していくと見ている。10月の見通しは台風18、19号の影響で伸び悩みが懸念されるが、国内客は修学旅行などの団体旅行が増加し、前年度並みを見込む。
 一方、観光庁の宿泊旅行統計調査によると、沖縄の延べ宿泊者数は13年(1~12月)に全国1位の伸び率を示した。しかし、14年1~3月の伸び率は前年同期比9・8%減の478万人泊で全国39位に転落した。4~6月は1・3%増の448万人泊と、プラスに転じたが26位にとどまっている。上半期(1~6月)は4・8%減の926万人泊だった。
 9月までの入域観光客が24カ月連続で前年を上回っているのとは対照的な数字だ。延べ宿泊者数がなぜ伸び悩んでいるのか、県は詳細に分析すべきではないか。
 観光客の満足度を高めるためには何が必要か。国内外の入域客がもう1泊したくなる施策とは何か。どうすれば観光客の1人当たり消費単価を上げて、県内経済に貢献できるか。
 入域観光客数を追いかけるだけでは気付かない課題を、延べ宿泊者数から見つけて、付加価値を高め、質を重視した観光立県づくりに生かしてほしい。