<社説>興南ハンド3冠 県民挙げて偉業たたえたい


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 第69回国民体育大会(長崎がんばらんば国体)のハンドボール少年男子決勝で県代表の興南が神奈川選抜に勝って優勝し、9年ぶり2度目の全国3冠を達成した。県勢の国体優勝は選抜チームを含めて3年ぶり4度目、興南単独としては9年ぶり2度目だ。3月の全国高校選抜、8月の南関東総体も制し、ことしの高校ハンドボール全国大会全てを制覇するという偉業を成し遂げた。県民を挙げて選手と監督の健闘をたたえたい。

 国体には都道府県が各学校から最も力のあるエース級の選手を集めての選抜による強豪チームが出場する。その中にあって沖縄県は興南の単独チームが全国に挑んだ。優勝への道のりは決して順風のまま進んだわけではない。
 実際に決勝では先行されては追い付き、また離されては逆転するという息の詰まる激しいシーソーゲームが繰り広げられた。どちらのチームが勝ってもおかしくない接戦の中、興南が勝利をつかんだのは選手たちの「絶対に勝つ」という強い精神力だったのではないか。そして選抜チームにはまねできない単独チームならではの辛苦を共に味わい、励まし合いながら成長して育む仲間意識による結束力だったのではないか。
 興南ハンドボール部は多くの有力選手を輩出している。日本ハンドボールリーグの琉球コラソンには2005年に全国3冠を達成した時の選手が多く在籍する。ことし8月にイランなどで開催された男子ジュニアアジア選手権大会の日本代表にも興南出身の屋比久浩之選手が選ばれている。現役の田里亮稀と伊舎堂博武の両選手はヨルダンなどでの男子ユースアジア選手権の日本代表として派遣された。
 黒島宣昭監督は9年前の全国3冠の時も指揮を執っており、前回と比べてことしの選手は「大型プレーヤーや超高校級の選手はいない」と説明する。それにもかかわらず快挙を成し遂げたのは“鉄壁”と呼ばれる堅守から繰り出す速攻を磨いたからだ。新チームが始動してから徹底的な走り込みなどの地道な練習を重ねており、原点に立ち帰った取り組みが最高の結果をもたらした。
 ことし、全国制覇のたびに選手たちの多くが口にしたのは「感謝」という言葉だ。そして試合を「楽しむ」。謙虚さと明るさを忘れずに突き進んできた興南ハンドボール部のさらなる飛躍に期待したい。