<社説>沖縄型筋萎縮症 国に難病指定求めたい


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 沖縄型神経原性筋萎縮症の患者や家族らによる家族会「希(のぞみ)の会」が発足した。筋肉が10年単位で徐々に衰えていく病気で、会では特定疾患(難病)認定や新薬開発を求める活動を進める。署名活動も展開している。多くの県民に理解と支援を広げたい。

 沖縄型神経原性筋萎縮症は30~40代に手足のけいれんが始まり、50代からは歩行困難になる。筋萎縮側索硬化症(ALS)とは違い、症状の進行は緩やかだ。旧厚生省には1985年に「沖縄本島にみられる感覚障害を伴う特異な神経原性筋萎縮症」と報告されている。現在、県内に約60人の患者がいることが確認されているが、まだ潜在的な患者がいるとみられている。
 会には15人が名を連ねた。会長に就任した我如古盛健さんは障がいを持ちながら全国で演奏活動を展開する音楽集団「ケントミファミリー」の中心的な存在だ。舞台で三線を演奏しながら歌い、障がいや病気に負けない強い意思を聴衆に届けている。病気に勝つためには精神的な強さだけでなく、医療的な支援が欠かせない。
 厚生労働省は原因や発症の仕組みがはっきり分からず、効果的な治療法がない病気を難病として指定し、医療費などを助成している。ALSは難病に指定されているが、沖縄型神経原性筋萎縮症は指定されていない。医療費の支払いなどに格差が生じている。会が指定を求めるのは当然だろう。
 難病指定にはいくつかの条件がある。患者数が人口の0・1%以下で、原因不明、治療法が未確立、長期にわたって生活面で支障があることなどだ。「沖縄型」は条件に十分当てはまるはずだ。
 現在指定されている難病は56疾患だが、来年1月から110疾患に拡大する。ところが新たな指定に「沖縄型」は含まれていない。厚労省はさらに190疾患を追加し、300まで拡大する。この中に「沖縄型」を含めてほしいとの会の要求は理にかなっている。
 さらに会によると、医師らの研究で「沖縄型」の病気の原因が遺伝子水準まで解明されているが、採算性の問題で製薬開発が進んでいないという。新薬ができれば治癒に望みがつながる。国が難病に指定し、公的助成を進めて新薬開発につなげるべきではないか。多くの県民による署名を進め、会が要求している難病指定を実現したい。