<社説>ODA大綱改定 非軍事の原則を変えるな


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 安倍政権が政府開発援助(ODA)の中身を大きく変えようとしている。非軍事の原則を曲げるようなことがあってはならない。

 政府はODA大綱の改定案で、これまで対象外だった他国軍の活動への支援に関し、民生や災害救助など非軍事目的の場合は容認すると打ち出した。軍事転用につながるような恐れはないのか、懸念は尽きない。議論も不十分だ。
 政府は年内の閣議決定を目指すが、あまりに拙速だ。大綱改定は、外務省が3月末に設置した有識者懇談会で主に議論された経緯があるが、国民的な合意もないまま、重大な政策変更を行うことは許されない。
 ODAは主に発展途上国に対し、インフラ整備や人道支援、環境保護などを目的に援助してきた。2003年策定の現大綱は「軍事的用途および国際紛争助長への使用を回避する」と定め、重点課題として(1)貧困削減(2)持続的成長(3)地球的規模の問題への取り組み(4)紛争予防など平和構築-を掲げる。
 だが外務省の有識者懇談会は6月、軍の支援を対象外とするODA方針を転換し、災害救助などでの軍支援を認める報告書をまとめた。対象を先進国や中進国に広げることも提言した。ODAを大きく見直すよう促した内容だ。
 これを踏まえ、政府は大綱改定案で「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の立場からODAの「深化」を打ち出し、平和構築や人道支援も「開発」の一環などと位置付けた。国連平和維持活動(PKO)との連携推進も掲げ、紛争下の緊急人道支援、地雷や不発弾の処理などを協力例に挙げた。
 「積極的平和主義」を掲げる安倍政権は、昨年12月に閣議決定した国家安全保障戦略で、ODAの戦略的、効果的活用を提唱していた。企業の海外進出にも資するような「効果的な運用」を目指しているが、途上国支援という本来の理念から懸け離れてはいないか。
 大綱改定案は「海上保安能力の強化」なども打ち出している。南シナ海で中国と領有権を争うベトナムやフィリピンへの協力が念頭にあろうが、ODAが地域の緊張を高めるようなことがあっては論外だ。
 安倍政権は集団的自衛権の行使容認に踏みだし、武器禁輸政策も撤廃した。ODAの平和主義も骨抜きにしようとするなら断じて許されない。平和主義の国是を覆す過ちを繰り返すべきではない。