<社説>最凶毒物検出 徹底調査は日米の責務だ


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 米軍基地返還跡地の沖縄市サッカー場のドラム缶付着物から、ダイオキシン類の中でも最凶の毒物が高濃度で見つかった。

 毒物発見から1年4カ月がたつ。いまだに誰が何を埋めたのか調べようとしない米軍は無責任過ぎる。それを放置する日本政府も同罪で、沖縄住民の生命・健康などどうでもいいと言わんばかりだ。両政府は直ちに包括的、徹底的に調査すべきだ。
 見つかったのは2・3・7・8-TeCDD(四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン)だ。高い催奇形性(妊娠中の摂取で胎児に障がいが起きる可能性)や発がん性を持つ。別の除草剤2・4-Dがほとんど検出されないため、有名な枯れ葉剤・オレンジ剤の可能性は低くなった。だがベトナム戦争で米軍が使った8種の枯れ葉剤のうち最も毒性が強いピンク剤、グリーン剤だった可能性がある。
 ダイオキシン研究の第一人者・宮田秀明摂南大学名誉教授が沖縄・生物多様性市民ネットワークのサッカー場監視評価プロジェクトの一環で、沖縄市の調査結果を分析した。市民団体の取り組みで初めて明らかになったわけだ。基地跡地なのだから本来、日米両政府が自らなすべき調査ではないか。
 ダイオキシンは土壌で分解せず、長期間安定的に存続する。だから今回のように50年たっても発見される。ドラム缶は腐食するし、別の物に入れて埋められた可能性もある。金属探知機での調査だけでは不十分だ。宮田氏が指摘するように、日米両政府は細かく等間隔でボーリング調査し、垂直方向でも詳細に調査すべきだ。
 ピンク剤やオレンジ剤は枯れ葉剤としてベトナム戦争の前半に使われ、後期には主にオレンジ剤が使われた。ベトナムで使われた枯れ葉剤の7割がオレンジ剤だ。日米両政府はオレンジ剤だけが枯れ葉剤だと主張し、他を除草剤と称して問題を矮小(わいしょう)化している。
 だがオレンジ剤か否かなど、さまつな問題にすぎない。最悪の毒物が検出された事実が問題なのだ。徹底調査は政府の責務ではないか。
 米軍が土地の履歴をいまだに明らかにしないのも問題だ。米本国では決して許されないはずだ。
 米国は2012年、ベトナム政府と協力してベトナムでの枯れ葉剤処理に乗り出した。日本を同盟国と呼ぶなら、沖縄の基地ではそれ以上に除去の義務があるはずだ。