<社説>エボラ感染拡大 流行終息に全力挙げよう


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 エボラ出血熱が流行している西アフリカのリベリアに滞在し、羽田空港に到着した40代男性に発熱の症状があり、感染が疑われる患者として国立国際医療研究センターに搬送された。血液検査でエボラウイルスが検出されず、陰性と判定された。検査をしても発症から3日程度は陽性の結果が出ないことがあるため、引き続き隔離病室で経過観察を続ける。

 エボラ熱が日本国内で感染拡大する懸念が現実味を帯びてきた。男性が感染していないことを願いつつ、関係機関はさらなる水際対策と拡大阻止の取り組みを進めてほしい。
 1976年以降、アフリカ中部などで散発的に発生してきたエボラ熱の今回の流行は昨年12月に始まったとされる。西アフリカで猛威を振るい、23日時点で感染者は疑い例を含めて計8カ国で1万141人に達し、死者は4922人に上る。最近は1週間から10日程度で感染者が千人前後増加しており、流行が拡大している。
 厚生労働省などは検疫所と入国管理局に全ての日本への入国者に、流行しているアフリカ4国の滞在歴がないか確認するよう指示した。海外からの入国者は年間2800万人に上り、水際対策を十分に進めることは極めて大切だ。
 県内も関係機関が取り組みを進めている。医療機関で感染が疑われる患者が受診した場合、患者は隔離病棟がある第1種感染症指定医療機関の県立南部医療センター・こども医療センターか琉球大学医学部付属病院に搬送する。搬送を担う4保健所には感染防止のカプセル型防護の担架と防護服10着が装備されている。万全な体制で備えてほしい。
 日本に飛び火する可能性を前提に国内対策を強化することは当然のことだが、忘れてならないのは西アフリカ流行国でのエボラ熱の封じ込め対策だ。本を絶たなければ感染拡大は防げない。各国は医療体制が十分でない最前線への医療支援を継続すべきだ。
 世界保健機関(WHO)の緊急委員会は流行国への渡航や貿易の全面規制などについて「不必要」との判断を示している。感染国を孤立させ、経済に悪影響を及ぼしてはならない。
 製薬会社の治療薬やワクチンの実用化も日本など各国で進む。全世界が協力して流行終息に全力を挙げ、犠牲者の増加を食い止めたい。