<社説>津波対策未実施 県内校対策は政府の責任


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 文部科学省が実施した全国調査で、県内の公立学校732校のうち215校で津波浸水が想定され、学校数では大阪の250校に次いで多いことが分かった。

 215校のうち83校は校舎改築に合わせて津波対策施設整備をするため、自治体の多くが対策は「検討中」としている。つまり必要があるものの「未実施」ということだ。
 予算の効率的な執行面からすればそうなろう。だが、自然災害はいつ襲ってくるか分からない。子どもたちの安全を第一に考えれば、施設整備による津波対策を自治体が前倒しして実施できるよう、政府は予算面で後押しをすべきだ。
 215校のうち96校は既に安全が確保され、21校は施設整備による津波対策を実施しており、15校は施設整備による対策が予定されている。
 安全対策をいくら施しても「想定外」の津波が襲来する可能性は否定できない。津波対策を終えた学校も避難訓練などの定期的な実施で、児童生徒らに万が一の際に取るべき行動を徹底的に覚えさせてほしい。
 県内で津波による浸水が想定される学校が全国に比べて多いのは四方を海に囲まれていることが要因である。
 だが、理由はそれだけではない。仲座栄三琉大教授が指摘するように、米国の戦略によって高台の土地は基地に取られ、その結果として沿岸部に人口が集中した側面がある。
 津波被害を受ける可能性の低い高台への移転などできない状況に多くの学校が置かれている。東日本大震災の教訓を生かそうにも、生かせないのである。
 ここにも日米安保の弊害が表れている。とすれば、米軍専用施設の74%が集中する沖縄には政府の特段の配慮が求められる。県内の私立を含めた学校の施設整備による津波対策には大胆に予算を投入し、子どもたちの安全確保に努める責任が政府にはある。
 中城村立津覇小学校は地域住民らの協力を得て高台までの避難路2本を整備した。海岸近くにある沖縄市立泡瀬小学校は近くの民間マンションと協定を結び、避難場所に指定している。
 他の自治体、学校でも地域と連携し、避難路の整備や避難地図作製などに早急に取り組み、子どもたちの安全確保に万全を期してもらいたい。