<社説>NIE月間と実践 新聞で生きる力育もう


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 11月は、新聞を教育に生かすNIE(Newspaper in Education)月間である。その実践フォーラムで興南中学校2年生の公開授業があった。中学では県内初の取り組みだ。

 生徒たちは自分で選んだ新聞記事を基に書いたコラムについて、より効果的な表現を練り上げ、説得力を増す例を出し合った。
 五輪の陸上競技に出場した女子選手の講話の記事を基に「自分に限界をつくらない」ための行動や考え方を深めた班は、挑戦する気持ちや日々の勉強、忍耐力などを実例として挙げ、コラムの中の「論」を補強していった。
 普段は読み手の生徒たちが、書き手になることによって、さまざまな視点や論理的な思考を一生懸命紡ぎ出す。目と耳を研ぎ澄まし、表現に磨きをかける生徒たちの表情は輝きに満ちていた。
 インターネットなどで情報があふれる中、新聞には考え、判断する力を培う情報が凝縮されている。その特徴を授業に効果的に取り入れることで、児童・生徒の「社会で生き抜いていく力」が育まれる。興南中の取り組みは水準の高い実践例と言えるだろう。
 県内のNIE活動は一層活発になっている。小、中学校だけでなく、コミュニケーションを深める素材として、大学生や企業の社員に新聞の活用法を学ばせる取り組みも大幅に増えている。
 一方で課題もある。「生きる力」を育むNIE活動に対する学校現場、行政やPTAの理解をさらに深めてもらうため、子どもたちが新聞を通して学びを深める実践の場をより多くの人たちに見てもらう機会を増やさねばならない。
 学力向上に資する調査結果もある。経済協力開発機構(OECD)が65カ国・地域の15歳を対象に実施した学習到達度調査(2009年)である。新聞を月に数回以上読む生徒の読解力の平均点が1回以下の生徒を大きく超えた。どの国でも同じ傾向が出ている。
 より良い社会を築くためには、人と人の結び付きを強め、共に考える機運を高めることが重要だ。新聞の特性は、社会で起きている幅広い出来事を迅速かつ情報の比較や保存がしやすい形で発信し、意見を形成する足掛かりにしてもらう点にある。
 私たちも信頼性の高い、多様な視点が息づく紙面づくりを担う重い使命をあらためてかみしめたい。