<社説>県功労者表彰 未来への羅針盤にしたい


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 文化の日のきょう、地方自治や教育、伝統芸能・工芸部門、平和・人権推進部門など8部門で功績のあった12人が県功労者として表彰される。

 県功労者表彰は日本に施政権が返還された翌年の1973年度から始まりことしで42回目になる。
 地方自治は阿波連本伸さん(76)=元県選挙管理委員長=と田場由盛さん(82)=県消防協会八重山地区支部長、教育の国吉守さん(81)=元県私立幼稚園連合会理事長、文化・学術功労は南條喜久子さん(79)=元沖縄洋舞協会会長、伝統芸能・工芸の金城唯喜さん(89)=県指定無形文化財「琉球漆器」保持者=と谷田嘉子さん(78)=国指定重要無形文化財「琉球舞踊」技能保持者、スポーツ振興は比知屋義夫さん(84)=県指定無形文化財「沖縄の空手・古武術」保持者、社会福祉は知念権平さん(85)=元沖縄地区防犯協会理事=と仲田八重子さん(80)=元県宮古保健所看護課長、平和・人権推進は大城藤六さん(84)=県平和祈念財団理事=と平良啓子さん(79)=対馬丸記念館語り部、一般篤行は渡久山長輝さん(80)=元中央教育審議会委員=だ。
 最高齢の金城さんは、かつて琉球王国の重要な輸出品だった沈金の技法を伝える。祖父は琉球王府の漆器製作所・貝摺奉行の職人だ。
 平良さんは対馬丸の生き残りだ。祖母、兄、いとこが犠牲になった。ことしは対馬丸撃沈から70年。国策によって疎開を余儀なくされた末、悲劇が起きた。平良さんは当時9歳。いかだで6日間漂流し奇跡的に一命を取り留めた。
 南條さんは沖縄にバレエを導入した南條みよしさん門下の1期生だ。今日の沖縄のバレエの興隆に尽力した。
 ことしは沖縄戦から69年。過酷な地上戦で尊い命と琉球の文化が失われた。12人は戦争をくぐり抜け、その後は米国による「軍事植民地」のような27年間を沖縄の復興に取り組み、無い無い尽くしの中でそれぞれの道を極めてきた。
 沖縄戦や米国統治を知らない世代が増える中で、その体験は県民一人一人に大きな示唆を与えてくれ、県民の財産といえる。
 沖縄はまだまだ多くの課題を抱えている。功労者の知恵と工夫を県勢発展のために生かしたい。12人が築いた道を羅針盤に、自己決定権を発揮して、平和で豊かな県づくりに取り組みたい。