<社説>辺野古仮設桟橋 透明性を著しく欠いている


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 人為的に豊かな自然が息づく海を埋め立てるのなら、環境保全は最も重要な手続きのはずである。

 にもかかわらず、主権者である県民が確認するすべがなかった計画が次々と明るみに出る。ごまかしの連鎖と言うしかない。
 米軍普天間飛行場の代わりの新基地を名護市辺野古に建設する計画で、沖縄防衛局が辺野古崎付近に100メートルを超える仮設桟橋を建設することが分かった。仮設桟橋は、砕石などを敷き詰めた上、海面を埋め立てる新基地の本体工事に向けた資材搬出に用いられる。
 海を埋め立てて造る仮設桟橋工事は本体工事に連なり、事実上の埋め立て着手と捉えていい重大な節目だが、伏せられていた。
 沖縄防衛局は6月に大手ゼネコンの大成建設と「シュワブ仮設工事」として、本体工事の準備工事の契約を55億円余で結んでいた。仮設桟橋はその一環だが、環境影響評価書や埋め立て承認申請書には記載がない。使用後に撤去する場合は、海上保安庁が監視船の係留に用いる浮桟橋と同様に、公有水面埋立法に基づく設計変更の申請が必要ないとされる。
 防衛省幹部は「いずれは埋め立てる区域だ」と主張するが、100メートル超の桟橋の大掛かりな造成工事は沿岸部のサンゴ群落などに悪影響を与えかねないだけに、見過ごすわけにはいかない。
 防衛局は工法や着工時期、撤去予定などの詳細を伏せたままで、県も非公表を受け入れている。
 環境への影響の厳密な検証がなされず、環境保全の手続きに不可欠な透明性を著しく欠いている。法の抜け道、環境保全手続きの欠陥と位置付けざるを得ない。民主性を度外視したこうした進め方を到底認めるわけにはいかない。
 新基地建設は手続き面で異常事態続きだ。防衛局は名護市に対し、キャンプ・シュワブ内の埋蔵文化財の調査を本年度内に終えるよう求めている。何年かかるか分からない文化財の正確な記録作業の放棄を促しているに等しい。乱暴な行為だ。
 さらに、埋め立てに伴う美謝川の河口の地下水路切り替えの距離を4倍以上の1キロ超に延ばす変更を申請した。環境への負荷が高まる重大な変更を環境アセスの終了後に繰り出すことは、後出しじゃんけんの最たるものである。
 科学性や民主性が担保できない新基地建設は中止するしかない。