<社説>揚水発電3% 電力各社は利用拡大を


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 太陽光発電などの再生可能エネルギーが余った時に蓄電池として機能する揚水発電所の設備利用率が昨年度、全国で3%にとどまった。ほとんど活用されていないに等しく、各電力会社の再生エネルギー普及に取り組む姿勢が問われかねない事態だ。

 揚水発電は電力に余裕があるときにポンプを使って標高の高い場所に水をくみ上げ、電力が不足した際などにためた水を標高の低い場所に流して水車を回して発電する。国内には40カ所以上あり、総出力は2600万キロワットと世界最大規模だ。巨大蓄電池が国内に存在していることになり、有効活用しない手はない。
 沖縄電力など電力5社は再生エネの供給が増え過ぎて需給バランスが崩れる恐れがあるとして、太陽光発電などの新規受け入れを中断している。しかし揚水発電を最大限活用すれば、再生エネの受け入れ可能量が増えるとみられている。なぜ利用が進んでいないのか。
 国内での揚水電力の運用方法はこれまで、余った再生エネの電力を蓄電することに主眼が置かれていなかったようだ。電力需要の少ない夜間に原子力や火力で発電した電気で水をくみ上げ、昼間の需要ピーク時に足りない電力を補う使い方が一般的だったからだ。
 これまでの運用方法では利用が進まないことは理解できる。しかしこれだけ再生エネの普及が課題となっている中で、新しい蓄電池としての運用が進んでいないことは疑問だ。稼働率を上げて再生エネの普及に取り組むべきだ。
 経済産業省は電力5社に対し、揚水発電の最大限活用による再生エネの受け入れ可能量を試算するよう求めている。県内でも電源開発が東村で世界初の海水を利用した揚水発電所を04年から運営している。現時点では試験研究施設の位置付けだが、今後は沖縄電力の蓄電池としての機能を果たしてほしい。
 国内の再生エネの発電割合は現在10%強だ。ドイツは2012年時点で20%強と日本の2倍を占めている。買い取り費用の電気料金への上乗せ額増大など課題もあるが、再生エネの拡大は国際的な潮流だ。
 政府も30年には20%以上まで拡大する方針を示している。揚水発電の利用以外にも送電網の整備による電力各社の電気の融通など、打つ手はいろいろあるはずだ。電力各社は再生エネ普及のために揚水発電の利用を拡大すべきだ。