<社説>県系ハワイ知事 沖縄との交流深化を期待


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 米ハワイ州知事選で県系3世のデービッド・ユタカ・イゲ氏(57)が当選した。県系人が州知事になるのは全米初である。ハワイの県系人、日系人と共に喜びを分かち合いたい。

 祖父母が西原町出身のイゲ氏は「沖縄人として初めて米国の知事になることを誇りに思う。沖縄県とさまざまな面で協力していけることを楽しみにしている」と述べている。その言葉からは自らのルーツに誇りを持ち、沖縄とのつながりを深めたいとの思いが伝わってくる。
 4世、5世と世代交代が進むハワイの県系人は、沖縄に対する思いやアイデンティティーが薄れる傾向にあるという。沖縄人であることを誇るイゲ氏の州知事当選は4世、5世の沖縄への関心を呼び起こすきっかけにもなろう。
 県人のハワイへの移民は1900年1月、27人がホノルルに到着したのが始まりである。114年がたち、州人口140万人のうち県系人は約4万人となっている。
 1世らは本土出身移民から言葉の違いで差別を受け、日本の真珠湾攻撃をきっかけに敵性国人として扱われ、差別された。
 その苦難の歴史を乗り越えて州知事を輩出するなど各界で確固たる地位を築いたことは、県系人が米国社会で大きな信頼を得た証しである。県民にとっても誇りであり、大きな励みにもなる。
 来年は沖縄県とハワイ州の姉妹都市締結30周年となる。観光などの面で沖縄がハワイから学ぶことは多い。イゲ新知事誕生を契機に文化や人材育成など幅広い分野での沖縄との交流がこれまで以上に深化することを期待したい。
 ハワイでは昨年、「沖縄の米軍基地」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、現知事のニール・アバクロンビー氏が在沖米海兵隊の受け入れに前向きな考えを示した経緯がある。同氏は家族住宅の建築計画を策定していることも説明していた。
 イゲ氏がアバクロンビー氏の考えを引き継ぐことを期待したい。県にはイゲ氏への積極的な働き掛けを求めたい。
 イゲ氏と州政府担当者らを沖縄に招き、県民生活に重大な影響を及ぼしている在沖米軍基地の現状を視察してもらい、理解を得ることがまず必要である。
 来年の姉妹都市締結30周年はその好機になる。県に早急な取り組みを求めたい。