<社説>日中首脳会談 本格的関係改善の一歩に


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 安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が首脳会談を行うことになった。第2次安倍政権が発足して2年近くたってようやく実現する。

 尖閣諸島をめぐる領土問題と首相による靖国神社参拝にみられる歴史問題で日中は激しく対立してきた。両国が対話による関係改善に踏み出した点は評価できる。
 東アジアの安全保障上の観点からも、経済的な観点からも両国関係の冷え込みは好ましくない。両首脳の真価が問われる。
 日中首脳会談に先立って両国政府は4項目からなる合意文書を発表した。尖閣諸島の領有権をめぐる問題は見解の相違を認め、対話と協議を通じて不測の事態を避けることで一致した。歴史認識をめぐる問題は「双方は歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い」として、過去の戦争責任に触れつつ、未来志向の対話を進める姿勢を示した。
 ただし合意文書は、両国がそれぞれ都合よく解釈できる余地を残しており、日中間の溝が深いことがにじみ出ている。
 例えば尖閣問題は「緊張状態が生じていることについて異なる見解を有している」と明記した。中国は日本が歩み寄ったと認識する。だが外務省幹部は「異なる見解」とは緊張状態を指し、「領有権問題はそもそも存在しない」というこれまでの立場は変わらないと強調している。
 歴史問題については「若干の認識の一致をみた」との表現にとどまり、靖国神社について明記を避けている。
 沖縄からすれば日中関係の冷え込みは深刻な問題だ。尖閣問題をめぐり日本国内でナショナリズムが高まり「中国脅威論」が広がった。その結果、沖縄の米軍基地の必要論が強調され、自衛隊の配備も強化される。沖縄が紛争を平和的に解決する場ではなく、緊張を高める場となっていることを危惧する。
 歴史問題については、かつて沖縄が日本防衛の「捨て石」にされた事実がある。安倍首相の靖国神社参拝は、過去の過ちと真剣に向き合う気があるのか疑念を持たざるを得ない。
 沖縄は日中の関係改善を切実に望んでいる。
 今回の日中首脳会談は、両国に深く突き刺さったトゲを抜き、「戦略的互恵関係」を再構築する始まりとすべきである。