<社説>知事選・経済振興・雇用 量と質両面から論争を


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 経済振興と雇用対策は知事選の主要な争点の一つだ。

 琉球新報と沖縄テレビ放送(OTV)が実施した最新の世論調査(8、9の両日実施)によると、候補者を選ぶ際に最も重視することは「普天間飛行場などの基地問題」(46・8%)に次いで「経済振興や雇用対策」(21・9%)が2番目に高い。
 経済振興と雇用を考える場合、キーワードは量と質の両立ではないか。
 経済振興について各候補は観光を重視している。観光を考える場合、入域観光客という量だけではなく、人数に宿泊数を掛けた延べ宿泊者数に注目したい。延べ宿泊者数が伸びれば、県内に落ちる観光収入の増加につながる。そのために多様な世代と海外客のニーズに応えられるように観光の質を高めなければならない。どうすれば観光客の1人当たり消費単価を上げて、県内経済に貢献できるか。この視点から具体的な政策を提示してほしい。
 観光施策で見解が分かれるのはカジノだ。喜納昌吉氏(66)が「入場者を富裕層に限定する」、仲井真弘多氏(75)が「県民のコンセンサスを得る」を条件に賛成する。翁長雄志氏(64)は「ギャンブル依存など悪影響が懸念される」として反対し、下地幹郎氏(53)は「メリット、デメリットの議論を深めて判断する」と回答した。
 沖縄観光の質を高めるためにカジノは必要なのかどうか。丁寧な議論が必要だろう。
 一括交付金は4候補とも「評価する」で一致している。ただし一括交付金は金額が政治交渉で増減する点に留意する必要がある。基地を引き受けることと引き換えに金額が決まるのであれば問題だ。
 一方、県内景気が拡大していることを背景に、9月の有効求人倍率(季節調整値)は0・75倍と、4カ月連続で復帰後最高を更新した。完全失業率も含め全国最低水準だが、数字上は改善傾向だ。
 確かに数字は改善しているが問題は労働の質だ。沖縄は非正規雇用の割合は44・5%(2012年)で全国一高い。雇用の質が改善されないから、企業に人が集まらず、人出不足を招いているという側面がある。
 自立へ向け経済振興策と雇用の両面で、量を確保し質をどう高めるか。知事選で政策論争が深まることを期待したい。