<社説>知事選 医療・福祉 尊厳保てる長寿社会を


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 日本は少子高齢化、人口減少という厳しい構造的な問題に直面するが、人口増が続く沖縄も決して無縁ではない。来るべき将来に備え、活力ある地域社会を持続発展させる上でも、医療・福祉など社会保障の充実は大きな課題だ。

 知事選の各候補者も基地問題や経済振興などとともに、医療・福祉を主要な政策と位置付ける。離島・過疎の医師不足や貧困問題など沖縄社会が抱える特有の課題も少なくない。障がい者が暮らしやすい社会の在り方を含め、実効性のある政策かどうか、しっかりと見極めたい。
 本紙などが実施した知事選の世論調査では、投票の際に重視する項目で、「基地問題」(46・8%)、「経済・雇用」(21・9%)に続き、「医療・福祉」(9・7%)が3番目に高かった。暮らしに直結する切実な課題だと県民が捉えている表れだろう。
 とりわけ高齢化が進む中、医療・介護制度や認知症対策など国の施策や取り組みと連携し、沖縄の実態に即した施策をどう構築するかが問われよう。
 厚生労働省によると、特別養護老人ホーム(特養)への入所を希望している待機者はことし3月の全国集計で約52万人に上る。県内の特養も満床状態で、在宅介護を受ける高齢者に限っても待機者は2102人に上る。国は在宅介護への移行を促すが、入所希望者が多い実態とはギャップがある。
 各候補者は特養の病床数増加で一致するが、社会保障財源に限りがある中、施設整備が追い付かない事態も十分に想定される。家族の負担軽減など在宅介護の体制充実も重要な課題となろう。
 介護や認知症対策は、健康長寿県復活の取り組みとも密接に関連するだけになおさらだ。認知症については、糖尿病や高血圧、喫煙が発症リスクを高める一方、豆腐や魚、野菜を中心とした食生活と運動習慣がリスクを減らすとされる。長寿崩壊に直面する県民全体の課題にほかならない。健康長寿者をいかに増やすか、「沖縄ビジョン」を明確に提示してもらいたい。
 一方、貧困対策とも関連するが、社会福祉の充実も待ったなしだ。障がい者をはじめ、誰もが尊厳を損なうことなく暮らせる社会の構築は、今に生きる私たちの当然の目標だ。共に支え合う「ゆいまーる」社会の在り方についても、知事選を通して考える契機としたい。