<社説>米中首脳会談 目標上回るCO2削減を


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 米国と中国は両国だけで世界の温室効果ガス総排出量の3分の1を排出している。地球環境への責任は際立って大きい。

 米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談し、それぞれの温室効果ガス削減目標を示した。従来の消極姿勢からすると大きな前進であり、歓迎したい。ただ、世界の現状を考えれば、この目標を上回る削減を求めたい。二大排出国としての責任を全うしてほしい。
 米国が二酸化炭素排出量(CO2)を2025年までに05年比で26~28%削減、中国は30年ごろを頂点に減少に転じさせる。
 これは世界に大きな驚きを与えた。米国の従来の目標は20年までに05年比で17%削減というものだ。期限をわずか5年延ばしただけでさらに10ポイントも削減するというのは極めて野心的といえる。
 だが1人当たり排出量で米国は日本の2倍、中国の5倍と際立って高い。これまでが浪費だったのだ。今回の目標値はその方向性を転換する意味を帯びる。その意味では大きな前進だ。
 一方、中国はこれまで、20年の国内総生産(GDP)当たり排出量を05年比で40~45%減らすというのが目標だった。一見、大きな減少に見えるが、GDPはもっと大幅に増えるから、総排出量では増えると見込まれていた。総量で減少に転じると打ち出すのは初だ。
 だが中国の排出量も30年より前に減少できるという研究結果がこれまでにも発表されていた。その意味で驚きはない。しかし国家主席が国際公約として述べたことで、後戻りできないという意義があるのだ。とはいえ、地球環境の現状を考えれば30年まで青天井で増やしていいはずがない。中国は減少に転ずる時期を大幅に前倒しするよう努力してもらいたい。
 来年、パリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、1997年の京都議定書に代わる排出削減の枠組みができるかどうかが問われている。欧州連合(EU)は先陣を切って90年比で30年に40%減という野心的目標を発表した。米中両国の今回の合意で作業が加速するのは間違いない。
 一方で日本は議論がようやく始まったばかりで、目標案提出のめどすら立っていない。各国に引けを取らない野心的目標を早急にまとめ、世界第5位の排出国としての責任を果たすべきだ。