<社説>きょう知事選 後世に恥じぬ選択を 自己決定権 内外に示そう


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 第12回沖縄県知事選挙がきょう16日、投開票される。12回目だが、単なる繰り返しでない特別な意味があることは周知の通りだ。県内だけでなく全国的、国際的にも高い関心を集めている。

 それだけではない。この1年の動きを考えれば、この選挙では、沖縄の土地や海、空の使い道について、われわれに決定権、すなわち自己決定権があるか、適切な判断ができるか否かが問われている。1968年の主席公選にも匹敵する歴史に刻まれる選挙といえる。国際社会にも、沖縄の先人にも後世にも恥じない選択ができるか。考え抜いて1票を投じたい。

明確な争点

 今選挙は無所属新人で元郵政民営化担当相の下地幹郎氏(53)、無所属新人で元参院議員の喜納昌吉氏(66)、無所属新人で前那覇市長の翁長雄志氏(64)、3選を目指す現職の仲井真弘多氏(75)=自民、次世代の党推薦=の4人の争いだ。
 特筆すべきは、県民世論を二分する課題について、各候補の主張がはっきり分かれていることだ。近年の知事選は各候補の主張が似た言い回しになり、争点が見えにくくなることが多かった。特に基地問題はそうだ。今回は違う。
 米軍普天間飛行場の移設については下地氏が「県民投票の結果に従う」と打ち出し、喜納氏は埋め立て承認の取り消しと嘉手納基地暫定統合を訴える。翁長氏は県内移設断念を掲げて承認取り消しを示唆、仲井真氏は「危険除去が最優先」と移設推進の姿勢を示す。
 東村高江の米軍ヘリパッド建設についても下地氏は容認、喜納、翁長の両氏は反対、仲井真氏は「どちらとも言えない」だ。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについては喜納、翁長、仲井真の3氏が配備撤回を求め、下地氏は配備の可否を明らかにせず、訓練削減の方向性は他と一致する。
 カジノをめぐっても違いは歴然としている。下地氏は「長所・短所の議論を深めて判断する」とし、喜納氏は「入場者の富裕層限定」を条件に賛成する。翁長氏はギャンブル依存などの悪影響を懸念し反対、仲井真氏は「県民合意」を条件に賛成する。
 いずれも沖縄の将来を大きく左右する問題だ。各氏の主張の是非をしっかり吟味し、選択したい。
 子育て・教育は各氏が力点を置く。主張は似通うが、若干の違いはある。例えば子ども医療費の無料化や制度見直し、教育費の減免などだ。どの主張に妥当性があるか、財源も含めた実現可能性があるか、見極める必要があろう。

公約の重み

 知事選の投票率は上昇・低下を繰り返しつつ、長期的には緩やかに低下してきた。
 だが米軍統治下にあった47年前まで、われわれには住民代表を選ぶ権利すらなかった。沖縄の住民が主体的に行政権を行使し、意思を表明できるこの権利は、先人が血のにじむ思いで勝ち取った権利であることを忘れてはならない。
 琉球新報社と沖縄テレビ放送が8、9の両日行った世論調査では選挙に「大いに関心」「ある程度関心」と答えた人は91・4%に上った。特に若年層で関心度は急速に高まっている。この選挙を投票率反転上昇の契機としたい。
 近年、投票率が下降したのは、主権者であることを実感できないのが原因だろう。「政治はどうせ改善しない」「誰に投票しても同じ」という諦めが投票所から足を遠のかせているのだ。その意味で、政治家が公約を軽々と破ることの悪影響は甚大だ。
 だが候補者が公約を示し、有権者が投票で公約を取捨選択することは民主主義の根本である。その重みをあらためてかみしめたい。
 今選挙が内外の関心を集めるということは、沖縄の意思表示の国際的な影響力を物語っている。実は主権者たるに十分な力を持っているのだ。沖縄には揺るがぬ自己決定権があり、適切な判断ができるということを、内外に示そう。