<社説>衆院解散へ アベノミクスの評価問え


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 安倍晋三首相は消費税再増税を延期し、21日に衆院を解散すると発表した。衆院選日程は12月2日公示、14日投開票となる。

 首相が再増税を判断する材料とした7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率が、年率換算1・6%減で2四半期連続の減少だった。経済の落ち込みは深刻だ。
 本来なら総選挙より景気対策を最優先すべき局面だろう。衆院を解散し総選挙を実施する以上、安倍政権が進めてきたアベノミクスの評価が争点の一つだ。一方、沖縄から見れば、知事選で米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対の意思表示をした民意を国政の場で問うことになる。
 アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略という3本の矢で構成される。
 第1の矢である金融緩和による円安で、大企業の業績を改善させたが、海外での現地生産を進めた日本企業の輸出は期待したほど伸びていない。むしろ、輸入原材料の値上がりが中小や零細企業を苦しめている。ガソリン価格の高騰は地域経済に打撃を与えている。
 食料品など輸入品や電気料金、日用品が値上がりして家計を圧迫している。4月に消費税率が8%に引き上げられたことによって、賃金増を上回るほど物価が上昇した。富裕層との格差は広がっている。増税の影響を下支えするため総額5・5兆円の財政出動をした。第2の矢の効果は限定的だ。
 9月の2人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は、物価変動を除いた実質で前年同月比5・6%減となり、消費増税後の4月以降、6カ月連続のマイナスだ。家計に余裕がなくなっている。日本経済は内需主導型でGDPの6割を消費が占める。消費が伸びなければ経済成長は期待できない。
 内閣府は9月の景気動向指数を発表し、数カ月前に景気が後退局面に入った可能性があることを示す「下方への局面変化」と評価している。
 経済停滞の原因の一つに第3の矢の成長戦略が進んでいないことが挙げられる。
 首相は18日の記者会見でデフレ脱却に向けた自らのアベノミクスの信任を問う考えを示した。しかし、経済政策がうまくいっていない責任は認めなかった。依然としてなぜ今解散するのか分かりにくい。衆院選は安倍政権の経済政策を正面から論争すべきだ。