<社説>北朝鮮非難決議 「反対」は人権侵害の容認


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 国連総会第3委員会は日本と欧州連合(EU)が提出した北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を賛成多数で採択した。

 同種の決議は10年連続だが、北朝鮮の人権状況は一向に改善を見ない。体制維持のため、国連決議も一顧だにせず、自国民を迫害することもいとわない北朝鮮の指導者の姿勢が大きな要因だ。
 一方で北朝鮮に影響力を持つ中国などが決議に反対し、国際社会の足並みがそろわないことも一因である。
 北朝鮮の人権侵害は日本人ら外国人の拉致問題だけではない。
 北朝鮮の人権状況を調べる国連調査委員会がことし2月に公表した最終報告書は、北朝鮮には現在8万~12万人の政治犯が収容所におり、過去50年間に数十万人が収容所で死亡したと推計している。
 罪のない多くの北朝鮮国民が過酷な生活を強いられている。公開処刑や拷問、宗教に基づく迫害などは今も続いている。国際社会はこの状況に目を背けてはならない。
 非難決議案の共同提案国は過去最多の62カ国に上り、欧米など111カ国が賛成したものの、19カ国が反対、55カ国が棄権した。
 国連憲章は国連の目的の一つとして「人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて国際協力を達成すること」を明記する。決議案に反対することは北朝鮮の人権侵害を容認するだけでなく、国連憲章に反する。
 決議は安保理に対し、人権侵害の国際刑事裁判所(ICC)への付託検討を初めて促す、これまでで最も厳しい内容となった。
 しかし拒否権を持つ常任理事国の中国はICC付託について「一国の人権状況の改善には役立たない」と否定的な立場を取っており、付託は実現しそうにない。
 人権問題で北朝鮮を追い込むことは朝鮮半島の安定に寄与しないとの見方もある。そういう状況にしないことが国連の役目であり、特に常任理事国である中国の務めだろう。
 北朝鮮は非難決議を「北朝鮮の国家の撲滅を企てる人権キャンペーン」として反発を強めている。現状では、自国民を迫害する非道を北朝鮮に改めさせることは極めて難しい状況にある。
 だが、国連加盟国には現状を打開し、北朝鮮国民を保護する責任がある。解決に向けて加盟各国が粘り強く対話の道を模索するしかない。