<社説>小型機墜落 原因究明し再発防止図れ


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 気温36度の酷暑が押し寄せていた休日の白昼、東京都調布市の閑静な住宅街に小型プロペラ機が墜落し、炎上した。
 墜落したのは、近くの調布飛行場から離陸した直後だった。満タンに近い燃料が一気に燃え、操縦士ら2人と巻き込まれて全焼した民家の住民1人が死亡し、計5人が重軽傷を負う惨事となった。

 警視庁の捜査本部によると、墜落直前に「ボコボコ」という異常音を発し、離陸から1分足らずで墜落していた。エンジンなど、機体に何らかの異常を来した可能性が濃厚だ。
 エンジンが2基以上ある大型機と違い、単発の小型機は異常が生じると、空港に戻るか、不時着するしかないという。機体の厳重な安全管理が欠かせない。
 フライトレコーダーなどを備えていないため、国土交通省や捜査本部は重傷を負った同乗者3人の証言、機体の残骸を基に原因を突き止めねばならない。徹底した調査を尽くしてもらいたい。
 小型機による事故は全国で後を絶たない。山中への墜落事例は多いが、住宅街に墜落した事故は珍しい。小型機の安全管理態勢全般に改めるべき問題点がないかについても検証を尽くすべきだ。
 小型機が飛び立った調布飛行場は東京都が管理する。墜落現場の住宅密集地は滑走路南端からわずか500メートルの距離しかない。近くにはサッカーのJリーグの試合が行われる味の素スタジアムや調布中学校がある。1980年には今回同様に離陸直後の小型機が調布中の校庭に墜落し、機長ら2人が死亡している。
 調布飛行場は東京都内の離島便や自家用機として小型機が飛行しており、調布市は自家用機の運航を減らすよう求めていた。禁止されていた遊覧飛行目的だったとの見方も浮上する中、けがをした3人をなぜ乗せていたのかは判然としない。
 今回の重大事故は市街地の空港の危険性を鮮明に示し、飛行制限の議論を呼び起こしている。事故を厳密な安全確保策と再発防止策の確立に結び付けてほしい。
 県内の普天間飛行場と嘉手納基地の両米軍飛行場も市街地の空港に当てはまろう。その離着陸回数は調布飛行場(年1万4千回~1万6千回)を大幅に上回る。事故を機に沖縄の米軍基地の過密さも再検証されるべきではないか。