<社説>上海株続落 市場の自律性を尊重せよ


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 不安定な中国の株式市場が世界の市場に影響を与えている。上海市場で前日比8・4%安と8年5カ月ぶりの下落率となった27日は、アジアの主要市場が軒並み下落、欧米市場の株価指数も下がった。

 28日は乱高下を繰り返し、一時的に5%超の下げを示す場面もあった。中国経済の先行き不安も一因だが、何よりも過度といえる中国政府の市場介入が混乱を引き起こした元凶であることは否めないだろう。
 中国政府は市場の自律性を尊重し、場当たり的な対策をやめ、世界経済の混乱を回避すべきだ。
 上海市場の代表的な指数である「総合指数」は6月12日に5166ポイントと直近でのピークに達したが、利益確定の売りにつられ、投資の8割を占めるとされる個人投資家がパニック的に売りに出た。
 これに対し、中国政府が取った対策は国有企業による株購入の指示や一部銘柄の取引停止などだ。株価維持に対して一時的な効果はあったにせよ、取引停止は市場への信頼を損なう結果となった。27日の急落も「政府系機関の株購入が後退」という観測が個人投資家の売りに拍車をかけたとされる。
 しかし「バブル」ともいえる状態をつくったのは、もともと中国政府の方針によるものだ。不動産投資の伸びが見込めないため、金融緩和に踏み切り、余剰資金が株式市場に流入した。さらに条件付きとはいえ、買った株を担保に倍以上の額で売買ができる信用取引を導入して市場が過熱した。
 国際通貨基金(IMF)の推計などによると、中国は1980年代半ばから一時期を除いて10%超の高成長で世界第2位の経済大国となった。今後数年は鈍化するとはいえ、成長率6%程度が見込まれる。世界経済における中国の存在感は大きいものだ。
 既に日本経済への影響は出始めており、自動車輸出の大幅減から2015年上半期に日本の対中国貿易赤字は過去最大となった。中国の株式バブルがはじければ、消費の冷え込みなど実態経済にも波及し、影響はさらに深刻にならざるを得ない。
 実態のない「マネーゲーム」は、日本も経験した。その結果起きたのはデフレなど国民生活への打撃だった。中国も同じ道をたどりかねない。負の連鎖を絶つには「官製相場」から脱却した自律的な株式市場の構築であろう。それが世界第2位の経済大国の責任だ。