<南風>DXな日々


社会
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 DXというとマツコ・デラックスや今はやりのデジタルトランスフォーメーションを思い浮かべる人も多いと思うが、ここはそういう意味ではない。「ディスレクシア(DYSLEXIA)」…読み書きにつまずきや学習の困難をきたす障がいのことだ。

 先月読谷村で開催された障がい者のための雇用・就労支援フォーラムで砂長美んさんの講演を聞いた。彼女は全国4万件あるという障がい者就労施設の商品を、博物館、道の駅などの観光地で販売する一般社団法人ありがとうショップ代表理事。自身もディスレクシアの一人である。

 彼女を知ったのはドキュメンタリー映画「DXな日々~美んちゃんの場合~」(2012年)。障がいを隠しながら就職するため10年で12回も解雇、転職。あるNPOとの出会いをきっかけに障がいを公表。持ち前の明るさとチャレンジ精神で、弁当屋を起業するまでを描いた映画だ。

 「障がい者を売っていた。商品を売っていなかった」と講演会は始まった。彼女が国会で展開している「全国障がい者商品コーナー」に障がい者施設の理事長を案内した時のことだ。彼が買ったのは国会議事堂饅頭。「自分たちの仲間が作った障がい者クッキーをなぜ買わないの」と聞くと、「地元でも買えるから」。そうか、お土産では買わないんだ。ピンときた彼女は早速同じ中身で名称と包装を国会のお土産用に変更。月間売上が3千円から30万円と劇的な改善となった。

 「私のゴールは最重度障がいの人に時給千円を払うこと」と彼女は言う。障がいのあるなしや程度で手当に差をつけるのではない。その人が持つ可能性を最大限に発揮できる環境をつくり出すのだ。そんな活動を真剣にかつ楽しく行っている。彼女のワクワク感がストレートに伝わってくるDXな講演会だった。
(稲嶺有晃、サン・エージェンシー取締役会長)