<南風>ポエティックに


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 先日、私の連載を読んだ友人が「いつも詩的で、読み終わると一つの文学に触れた気分がする」と言ってきました。

 なんと連載を続ける上でこれだけは心がけていることなのです。

 このコラム南風は12人の違う分野の方々が連載するわけですが、初めてお話を頂いた時、この偉大な先輩方に囲まれて、私はどのようなことをお伝えすべきか、今の私に何がお届けできるかと考えました。ピアノを弾く事だけで表現をしてきた私にとって新たな挑戦であると同時に、ありがたくも自分の歩んできた道を振り返る良い機会になりました。

 留学生活、ピアノについて、イタリアのあれこれ‥欲張りな私には書きたい事が星の数ほどありました。ところが困った。それらを皆様が時間を割いて読むほどの、価値ある文章に出来る深い物の見方や、するどい意見が今の私にはなかったのです。

 そんな時イタリアの女神は微笑んでくれました。

 留学して大きく変化したのは「詩的に生きる」ようになったこと。この国の人たちはとにかく美しい物や人、悲しい時や怒った時、何かに例えるのが上手で、そうすると日々の小さな出来事も鮮明に記憶されます。その素敵な文化を伝えたいと思い、毎回文章に比喩を散りばめ、会話しているようなリズムを与えることにしました。仕上がった時には1度音読し、物語のような流れはあるか、週はじめにふさわしい口調であるかと言葉を選び直したりしています。

 そうする事で感覚的に皆様がイタリアに触れられたら、と続けてきた私には冒頭で話した友人の一言は大きすぎるご褒美でした。

 一度きりの人生を存分に味うプロ、イタリア人のこの文化、皆様に本当おすすめです。
(下里豪志、ピアニスト)