<南風>沖縄戦の全学徒たち


社会
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 「なぜ、ひめゆりだけなんですか」―開館以来、時々来館者からそんな質問を投げかけられます。戦前、沖縄には沖縄師範学校男子部をはじめ21の中等学校がありました。沖縄戦では全ての学校の生徒が動員されたのに、なぜ資料館ではひめゆり学徒隊のことしか取り上げていないのかという質問です。

 ひめゆり資料館は、ひめゆり同窓会が建設した資料館です。そのため、必然的にひめゆりの戦争体験を伝える資料館になっています。しかしまた、ひめゆり資料館には全国からたくさんの方々が訪れ、沖縄戦を知り学ぶ場になっており、一同窓会の枠を超えた社会的な施設になっているとも言えるでしょう。

 資料館では来館者の声を受け止め、開館10周年の1999年に、沖縄戦の全学徒隊を取り上げた「沖縄戦の全学徒たち」展を開催しました。会場では各学徒隊の生存者に戦争体験を語っていただき、全学徒の体験を紹介する初の展示会となりました。その成果を受け、2004年のリニューアルでは全学徒隊を紹介する展示を新設しました。

 一方、沖縄県は、戦後70年の15年に、沖縄戦継承事業の一環として21の学徒隊の証言動画のネット配信を開始、17年には平和祈念公園内に沖縄戦「全学徒隊の碑」を建立、19年には、碑のそばに学校ごとの戦没者数を紹介する説明板を設置しました。

 その戦没者数を調べたのは「元全学徒の会」の皆さんです。全員90歳を過ぎる年齢ですが、戦後74年目にして、全戦没者数を調べ上げる偉業を成し遂げたのです。その原動力は、多くの学友を戦場で失った無念の思いだと思います。

 ひめゆり資料館は、その思いも受け止め、これからも沖縄戦の全学徒たちの戦争体験を伝える取り組みを行っていきたいと考えています。
(普天間朝佳、ひめゆり平和祈念資料館館長)